無駄美人の千早だけではなく、実力テスト一位の太一も、校内では目立つ存在。そんな二人が組んでかるた部を作るも、無駄部と囁かれる。部室に畳を運び入れ、一息がてら雑談。千早はクイーンを目指しているのに、現クイーンが同い年であることすら知らなかった。
「おまえ 全然本気じゃねえんだろ!? 新につられて言ってるだけで」
太一の口から新の名前が出て、自転車で追って来た新を思い浮かべる千早。何を想っているのか察する太一。千早は福井から戻って以降、新の夢を何度も見ていた。
部室での試合形式での練習で千早が勝ったが、太一が駄目出し。
「おれ 千早が序盤に弱い理由わかったかも…… 耳のよさに甘えて 頭に入れる努力できてない 正確に覚えられてない」
和服を着たいという理由だけで弓道部に入った大江奏=かなちゃんは、かるた部部員募集ポスターが気になっていた。大江はかるた部の練習を覗きに行き、千早に捕まる。そして、百人一首の歴史的背景を饒舌に語るが、彼女はただの古典オタクだった。千早はかるたが情緒もへったくれもない競技と言われ、「ちはやふる」という好きな歌もちゃんとあると話す。
「意味も知ってるよ 竜田川が真っ赤に水を絞り染めしてる 超キレーな景色って意味ー」
しかし、大江はそれを「激しい恋の歌」だと言う。
「『ちはやぶる』は『神』の枕詞で勢いの激しいこと 『水くくる』には水をくぐるという説と 絞りのくくりと両方ありますけど 水のくぐる紅葉の紅色は 離れても秘めずにいられない恋心かと思います そう思ってみたら あの黒で印刷されたかるたでも もう深い紅色にしか見えないんじゃないですか?」
札の向こうにある、色も温度もある世界。千早は知らないことを教えてくれる大江を質問攻めにし、どうにか口説き落とす。大江の家は老舗呉服店。千早にカタログモデルになって貰うこと、試合の時は袴を着ることを条件に、大江はかるた部に入ることになった。更には、小学校時代に対戦した西田=肉まんくんを校内で発見。即、勧誘。
新とまた かるたがしたい かるたは楽しいよって 仲間がいるのは楽しいよって 伝えたい 「ちはやふる」は 真っ赤な恋の歌なんだ――
memo
前話の最後のコマに後姿だけ描かれてはいたが、かなちゃん初登場の回。肉まんくんの初登場は第5首。かなちゃんの怒涛の蘊蓄より先に、畳を運び入れた後に千早を見る太一の場面で紅葉が描かれている。
かなちゃんがランニングをさぼって詠んでいるのは「はるすぎて」。覗きに行った部室で読まれているのが「むらさめの」「あらしふく」「みせばやな」。教室でのかなちゃん解説で登場するのは歌番号1の「あきのたの」から始まり、「かくとだに」のさしもぐさの意味、背景で描かれた札は「みかきもり」「このたびは」「きみがため・お」「やすらわで」「こぬひとを」「もろともに」。その後、千早と太一の練習時に読まれているのは「ゆうされば」「よをこめて」「うかりける」。最後に新が広げている札は、苦しい心を表すような「ながからん」「はなさそう」「ながらえば」、そして「ちはやぶる」。
第2巻に収録されているのはここまで。描かれている花が分かり難いが、フリージア? 花言葉は「あどけなさ」「純潔」「親愛の情」。表紙袖の歌は、第7首で取り上げられた「たれをかも」。巻末四コマ漫画は、千早と千歳の芸能ネタとモデル話、Tシャツを買いに行く千早とかなちゃん。