とある日曜日。千早は太一と二人で、新が住む福井へ向かう。新に何があったのかと心配してばかりの千早に、太一は「好きなやつとかいんのかよ?」と訊く。千早は大真面目に「原田先生」。
「毎年バレンタインにチョコあげるんだけど 奥さんいるからって振られるの」
太一は心底呆れ顔。
「おまえ そんなの恋って言わねーよ」
千早に「じゃあ、恋ってどんなのよ」と訊かれ、太一は答えながら顔を背ける。
「それはな―― …… そいつといても 楽しくないってことだよ」
更に太一は考える。
イライラする 思いどおりにいかない 楽しくない でも そばにいたい
新の自宅前に着き、太一は新に昔言われたことを思い出す。
真島 おめぇ 卑怯なやつやのー
二人が玄関前で躊躇していると、隣家の女の子に声を掛けられる。新は駅前の本屋でバイト中とのことで、二人は来た道を引き返す。福井に到着してから、千早はずっと迷っていた。
「私…… 新に会いたいのかな 会いたくないのかな……」
太一は並んで歩く千早の手を繋ごうと伸ばし掛ける。その時、千早が擦れ違った自転車を追って走り出した。自転車の男を捕まえ、勢いで道路脇に転がる。自転車に乗っていたのは新だった。
会いたかった 会いたかった 会いたかった 会いたかった
千早は転んで泥だらけになってしまい、新の自宅に上がることに。隣家の女の子、由宇が千早用の服を貸してくれる。千早が風呂を使っている間、太一は新に身長を訊ねる。新は身長173cmと言い、1cm負けたことが悔しい太一は同じだと見栄を張るが疑われる。
「ふーん… サバ読んでえん? おまえ 卑怯なやつやったもんな」
新は一貫して冷淡で、二人にもう帰るよう促す。千早はならばと新に書いて来た手紙を出そうと鞄を開け、持参したかるたを三人でやろうと誘う。誰の返事も聞かないうちに隣室の襖を開け、畳にかるたを広げ始める。が、新はかるたを蹴り飛ばした。
「日本語がわからんの? もうかるたはやってない やらない」
驚いて見上げた千早の視線の先には、新祖父の仏壇。
新… かるたはもう やれない……?
memo
福井の新の元へ向かう千早と太一。かるたを蹴る時の新がキレッキレに怖い。蹴った瞬間の札はぼやけていて読み取りが難しいが、その後に「なげきつつ」と「ひとはいさ」のみが表側になっているのが見える。というか、他人宅の部屋を勝手に開ける千早……。