宿舎地下にある尋問室。ゼシカ、エイト、ヤンガスが並んで立ち、テーブルを挟んでマルチェロが座っている。ヤンガスがテーブルをガンッと叩き付ける。
ヤンガス 「いいかげんにしやがれ! ぬれぎぬだって 言ってんだろ!?」
ゼシカもテーブルを叩いて文句を言う。
ゼシカ 「そうよ! あんたたちの仲間に頼まれて 院長の様子を見にいったんだって さっきから言ってるじゃない! だいたい どうして私たちがこんな目にあわなきゃならないのよっ!?」
マルチェロは厳しい顔。
マルチェロ 「……院長は甘すぎる。おまえたちが犯人でないなら 部下たちは誰にやられたのだ? 私の目はごまかせんぞ。白状するまで……」
そこでドアがノックされる。
マルチェロ 「誰だ。」
ドアの外から声が聞こえる。
ククール 「団長どのが オレを呼んだんじゃないんですか?」
マルチェロ 「……入れ。」
部屋の中にいたお付きの騎士団員がドアを開ける。
まずは、敬礼するククール。それから部屋に入って来て、マルチェロの隣へ歩み寄る。
マルチェロ 「お前に質問がある。だが その前に……。修道院長の命を狙い部屋に忍び込んだ賊を 私はさきほど捕えた。」
マルチェロは顎でエイト達を指す。ククールも視線を向ける。
マルチェロ 「こいつらだ。わが聖堂騎士団の団員たちが6人もやられたよ。」
ククールが口笛を吹く。
マルチェロ 「……。」
マルチェロに睨まれ、ククールが肩を竦める。
マルチェロ 「……まあいい。問題はここからだ。わがマイエラ修道院は厳重に警備されている。よそ者が忍び込める隙なぞない。……誰かが手引きをしない限りはな。」
ククールはマルチェロに睨まれ、左手を顎に当て首を傾げてみせる。
マルチェロは懐から指輪を取り出し、ククールに示す。
マルチェロ 「こやつらの荷物を調べたところ この指輪が出てきた。聖堂騎士団員ククール。君の指輪はどこにある? 持っているなら見せてくれ。」
ククールは肩を震わせて笑い出し マルチェロの手から指輪を奪い取る。マルチェロは怒って立ち上がる。
ククール 「よかった! 団長どのの手に戻っていたとは!」
マルチェロ 「……なんだと?」
ククールは指輪を嵌めながら言う。
ククール 「酒場でスリに盗まれて 困っていたんですよ。よかった 見つかって。」
ヤンガス 「スリだとぅ!? おい にいちゃん! そいつぁ 話が違う……」
テーブルの陰で、ゼシカがヤンガスの足を蹴飛ばして、話を遮る。
ゼシカ 「そんな指輪 どうだっていいわ! あいつは最初っから そういう魂胆だったのよ! 大体 あんなケーハク男の言うことを素直に聞いたのが そもそもまちがいだったのよ!」
ククールはマルチェロに敬礼。
ククール 「そういう訳です。では オレは部屋に戻ります。」
そして振り返らず、ドアも閉めずに出て行く。
マルチェロ 「待て!! まだ話は終わってないぞ!」
マルチェロは苦虫を潰したような顔をして、どかっと椅子に座る。
マルチェロ 「……仕方のない奴め。まあいい。あいつの処分はいつでもできる。それよりも。」
エイト達を見る。
マルチェロ 「……待たせたな。では 君たちに話を聞こうか? どうして あの部屋にいた? 何が目的なんだ。さっさと白状したまえ。」
ヤンガスが必死に言い訳を始める。
ヤンガス 「だから アッシたちは何もやってねえって言ってんだろ!」
そこに、部屋をノックする音。
マルチェロ 「今度は何だ。」
廊下にいる騎士団員 「修道院の外で うろついていた魔物を1匹捕まえて参りました!」
マルチェロ 「なに? 魔物だと?」
部屋の中にいるお付きの騎士団員がドアを開けると、トロデ王が姿を現す。連れて来た騎士団員が、トロデ王を部屋の中に蹴り入れる。トロデ王は騎士団員に襟首を掴まれる。
トロデ王 「イテテテテ……! な 何をする!?」
ヤンガスとゼシカは目をそらす。トロデ王は机の上に立って、怒っている。
トロデ王 「おい ヤンガス! ゼシカ! こんな所で何をしとるんじゃ! エイト!! 答えんか! あんまり長い間帰ってこんから さみしくなって探しに来てやったぞい!」
マルチェロは勝ち誇ったような顔をして立ち上がり、トロデ王の首根っこを掴み上げる。
マルチェロ 「……旅人どのは どうやらこの魔物の仲間らしい。このような澄んだ目をした方々が!」
トロデ王 「なんじゃ お前は!! 無礼者め その手を放さんかい! おろせっ! 助けてくれ エイト!」
マルチェロはトロデ王を、テーブルの向こうのエイト達の方へ投げつける。
マルチェロ 「魔物の手下どもめ。オディロ院長はだませても この私はそうはいかんぞ。指輪を盗み 忍び込んだのも その魔物の命令だな? 神をも恐れぬバチ当たりどもめ。院長を殺せば 信仰の要を失い 人々は混乱する。その隙を狙い 勢力拡大を図った……そんな所か。」
そして、拷問室を示して言う。
マルチェロ 「この魔物たちを牢屋へ! 明日の夜明けとともに拷問して その罪の重さを思い知らせてやる!」
騎士団員が敬礼する。マルチェロが拷問室を背後に、にやりと笑う。
マルチェロ 「……明日の夜明けを楽しみにしておくんだな。」
fin.