千早が見る限り、大江と駒野の能力は同程度。なのに、枚数差がついている。駒野のお手付きが二回なのに対し、大江はゼロ。
お手つき…… 無条件で相手との差が2枚つく―― 私はずっと「2枚取れば取り返せる」と思ってたけど 金井桜さんとの試合で思った ミスをしない相手に対して お手つきは致命傷だ
それが焦りやリズムの乱れ、逆に相手に余裕を与えることになる。駒野はミスを重ね、八枚差となってしまう。駒野は諦めず、自陣の札十枚を一カ所に固める作戦に出た。自陣が出れば全部払って取れば良いのだ。なりふり構っていられない。
僕はかなちゃんにも負けたくないけど 自分にだって負けたくない
五枚差と詰められた大江は、集中することに務める。
当たり札だけに手を伸ばすんだ まっすぐ 速く 千早ちゃんがクイーンとしていたような ギリギリの勝負を
いきなりは無理だったが、「ちはや」を速く取った。
さっき机くんが私より速く「おおえ」を取ったように いつの間にか 友達の得意札が 自分の得意札に
接戦の末、勝利したのは大江。駒野は清々しい表情。
「かなちゃん おめでとう」
大江は挨拶で頭を下げたまま、泣いていた。駒野が肩に触れ、健闘を称える。千早も涙。
そして千早が忘れかけていたもう一方の試合。太一と西田の熱い戦いは、運命戦に持ち越されていた。空札は六枚あり、自陣の札から太一有利だが、太一は敵陣に攻め込もうとする。
運命戦? ふざけんな 運命なんかに任せねえ
memo
引き続き、かなちゃん対机くんのD級決勝戦。かなちゃんの描写多め。前回は立ち居振る舞い、今回は試合運びの素晴らしさ。読まれた札は「このたびは」「めぐりあいて」「みよしのの」「ちはやぶる」「たかさごの」「あまのはら」。