筑波は北海道の「下の句かるた」では負け知らずだったので、上の句かるたでも強くなると舌なめずり。C級の駒野ではなく、B級かつイケメンの太一に教わりたがる。下の句かるた独特の習慣を持ち込む筑波に、千早は困惑。しかし、筑波の札の取り方に、若宮との共通点を見い出す。
札直で 一点 強い指先
筑波との対戦で取られてばかりの花野だが、やっと一枚抑えた。嬉しそうに札を見る花野に、千早は爪切りを渡す。筑波の強い指先とぶつかったら、爪がはがれる恐れがある。千早の説得に抵抗する花野は、ついに白状。
「やめてください! 言ったじゃないですか! 私はかるたじゃなくて 真島先輩と一緒にいたくて入部――…」
そこまで言って、真っ赤になって部室から出て行く花野。西田は追いかけようとする千早に放っておこうと止めるが、千早の言葉に何も言えなくなる。
「私 去年の全国大会で倒れて棄権してから もう一人部員がいてくれたらって 毎日思ってた 毎日思ってた やっと来てくれた 二人も残ってくれた 絶対放っとかない」
西田は初心者用かるたを出し、筑波にはA級でかるた歴も長い自分が教えると有無を言わせず座る。
去年の全国大会 だれも綾瀬を責める気にならなかったのは いちばん悔しいのはあいつだって知ってたから
筑波に厳しく指導を始める西田。その様子に皆も西田の本気を見る。
「よし 強くしてやるから」
大江が泣いている花野を発見。
「百人一首は”短歌”です 31音のルールを守って 想いと技術の上に編まれた歌だからこそ 千年残ったんです 『伝える』『伝わる』はルールの向こうにある さっきみたいな言葉で花野さんの本当の想いが部長に伝わったと思いますか?」
大江は花野を連れて帰りながら、語り掛ける。
「”恥ずかしい”と泣ける心は美しいと思います」
部室に戻った花野は、試合ではなく、まずは百人一首を覚えたいと申し出る。そして自ら爪を切り始めた。
六月。福井大会A級の優勝は村尾、準優勝が新。新は名人戦にと期待されるが、太一と千早のことが頭にある。
「ぼくの目の前の本命は 高校選手権です 戦いたいやつがいるんです」
memo
新入部員筑波と木のかるた。そーいや、北海道民の私も高校時代に授業で触ったわー、木のかるた。百人一首に触れるのが目的だった筈だから、対戦ルールまで教わったかどうかも覚えてないけど。木の札は「なにわがた」と「よのなかよ」、その後読まれた札は「あらざらん」「たれをかも」「はなのいろは」。
第9巻終了。百合の花言葉は「純粋」「無垢」「威厳」。白百合に限定すると「純潔」「威厳」。袖の歌は第51首より「花の色は」。巻末四コマ漫画は、千歳と単行本表紙候補の行列、菫とかなちゃん睫毛、西田姉がヒョロを捕獲。