北央は選手層が厚いが、部員集めが楽なわけではない。一年生は全員、ヒョロが集めて来た。ヒョロは後輩の面倒見が良い。須藤のような実力あるリーダーは抜けたが、今の方がチームとしての完成度が高いと、持田先生は見ている。千早もそんなヒョロを観察していた。
すごいね ヒョロくん 伝わってくるよ チームからの信頼と チームへの気配りが 太一みたいだ
千早はチームメイトの戦況を確認。ヒョロの目に、千早が太一と重なって映る。千早が気負っている筑波に「息を吐いて」と声を掛ける。息の話は、田丸にもあった。駒野や西田にも記憶がある。太一はよく、こう言っていた。
息をしろって言ったら たいていの人は思いっきり「吸う」けど 大事なのは まず吐くこと
千早が払った札を取りに立ち上がり、戻りながら仲間達の背中をポンポン叩く。これも太一がやっていたこと。大江は息を呑む。
千早ちゃんは もう ないと 思ってるんだ 真島部長が 瑞沢かるた部で一緒に戦うことは もう ない もう いない
千早の目に涙が浮かんでいることに、皆も気付く。筑波が一枚取って、声を上げる。田丸も次に向けて息を整えるが、太田がまた嫌味を飛ばして来る。田丸はそれでも連取。
仲間外れにされても 辞めなかったかるた 私が本当になりたかったのは 褒められる人? ちがう ちがう 強くなりたくて がんばってきたことは だれに褒められなくたって なくならない
千早が一勝目を決めた。北央としては、誰かが負けたらターボをかける。駒野が取られ、流れを切ろうと立ち上がる。足の甲に出来たタコが目に入った。以前、大江に励まされた。
畳の上で何年も正座をしてきた足です タコができるまでがんばりましょうよ
駒野は喝を入れ続ける。「よし1枚! 追い上げるよー!」
ずっと 綾瀬の強欲に引っぱってもらってたけど タコだってできた これはもう 僕のかるた道だ
西田も取りつ取られつながら戦う。
不器用な綾瀬が 真島みたいな調整役をして いまある戦力で勝とうとして
観客席から「いい試合」だと感想が漏れる。
いい試合とかどーでもいいんだよ 勝つことでしか報われない そういう勝負をしてるんだ
memo
試合続行中。読まれた札は「たちわかれ」「しらつゆに」「ひとはいさ」「たれをかも」「めぐりあいて」「なつのよは」「わたのはら・や」。実質、ヒョロの回。ただ、準主要キャラとはいえ、冗長に感じる。