第141首 かるたを好きじゃないのに

ちはやふる ちはやふる_高3 漫画
漫画「ちはやふる」の伏線や感想などの超個人的備忘録。あらすじの記述あり。ネタばれあり注意。

大江は田丸の提案通り、総当たり戦を繰り返して予選メンバーを決める参考にすると宣言。あくまでも参考だ。西田は千早はかるたバカなので戻って来ると楽観している。筑波は千早に加え太一も戻って来ると信じ、自身こそエースになってやろうと張り切る。花野は憂慮していた。

綾瀬先輩の あの ポロポロと崩れ落ちそうな礼…… 待ってれば帰って来るって言える…? どーなるの東京都予選……

千早はがりがり勉強中。自分がかるたをしない日が来るなんて、と部員の顔が浮かぶ。

みんな みんな みんな 太一……

太一が通う塾で、周防は小論文特別対策講座の講師をしている。マイクを使っても聞き取るのに苦労するような小さな声で、「僕は青春ぽい日々はなかった」と泣いてみたり、自慢なのか、愚痴なのかと、混乱する塾生たち。

「でも ある日 気がついたんです 『青春』という文字の中に『月日』があったこと とたんに青春が惜しくなりました 自分の中に青春を探し始めました」

聞き入る太一、塾生たち。

「言葉には 力が確かにあることを 忘れないでいてください」

塾帰り、原田先生の言葉と、周防の授業を照らし合わせる。

”言葉には 力が確かにあることを” ”力”…… 呪いだ

同じ塾の女子生徒に声を掛けられ、店内が騒がしいだろうからとイヤホンを差し出されるが、突然現れた周防が遮る。かるたを取る者には耳が大切なので、守ってくれたというわけだ。でも、太一はかるた部をやめている。

「ふうん えらいなあって思ってたよ あんな かるたを心底好きな人たちの中にいるのは きつかったよね 君はかるたを好きじゃないのに 好きじゃないのに すごくがんばって えらいなあって 思ってたよ」

周防の言葉が、真っ黒に染まったかるたのように、太一に降り注ぐ。

好きじゃない 好きじゃない かるたを 好きじゃない 好きじゃない そんなこと認めたら そばにいられない

かるた部のメンバー、筑波弟達、原田先生、坪口、ヒョロ、新、そして笑顔の千早……

「それでも耐えるくらい 好きだったんだね あの人たちが」

周防の言葉に、太一は泣くのを抑えられず口を覆う。周防は尚も続ける。

「いいんじゃない 僕も かるた 好きじゃないよ」

太一は涙が止まらない目で周防を見上げた。月を背負った周防は皇帝のよう。

なのに 畳の上では 無敵

周防は「じゃあね」と去って行く。太一も再び歩き始める。

どうするつもりだ どうするつもりだ こんな天才について行って でも おれをずっと励ましてくれてた あの言葉を あの毎日を 呪いにしたまま生きていくなんてできない

太一は周防の後を追う。

"まつげくん 青春全部 懸けてから言いなさい"

ちはやふる
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memo

日本史の成績が比較的良い千早。太一と新が高松宮杯で対戦する第26巻第134首の扉絵で新が手にしていたのが「日本史事典」なのだけれど、関係あるのだろうか。

一方、周防と太一。名人防衛後に「楽しかった」って思ったんだよね、周防さん。太一については第11巻第62首で、白波会に入会した菫が「だって かるた 楽しいじゃないですか」と言った時、太一が微妙な顔をしている描写が既にある。ただ、千早がA級昇格戦に臨んだ第2巻第7首で、窓に手を当てて見入っている表情は、千早に対してだけではなく、かるたに心を奪われているようにも思える。確かに楽しめてはいなかったかもしれないけど、根っこのところでは好きと言えるのではないのかな。

太一に振って来る何枚かの黒いかるたのうち、大きく表示されているのは恋の浮き沈みを歌う「みかきもり」、寒さが身に沁みる「みよしのの」で、他はちょっと分かり難い文字サイズだが「しらつゆに」「みちのくの」「しのぶれど」「こころにも」など恋に関連する歌ばかりのようだ。

posted on January 11, 2016
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