福井。新は村尾との練習試合で勝つ。高松宮杯で優勝したのは村尾だった。太一との試合後、切り替えられなかったのだ。太一からは、新に追いつくにはどうしたら、勝つにはどうしたら、という気持ちが伝わって来た。結局「ちは」は出なかった。
太一はずっと一番の狙い札にしてた 出たらどうなってたかな 出てたら おれ 守れたかな 太一が取って… 流れが変わったかな 戦いたいな また 何度でも
非公式の「太一杯」、参加者は36名。三人一組の源平戦で、チームの勝利ではなく個人の取った枚数で競い、個人優勝を決定、千早が発表した優勝賞品は、太一のキス! お約束~と色めき立つ女性陣、絶対に要らないであろう男性達、何でもいいから負けないと張り切る者。
ま…待て 待って… おれ 主役じゃねーの!? なんで商品出す側なの!? キスとか……
しかし、千早が楽しげに奮闘している様子に、何も言えるわけがない。太一と同じチームになったのは、原田先生とヒョロ。隣に座るヒョロが、ぼそっと言う。
「懐かしいな 源平戦なんて あの時以来…… おれは あのころより…… ……」
小学生の時、千早と新と三人で、ヒョロとその仲間相手に戦った。
あのときと同じ部屋で かるたをやる人に囲まれて あのころより 強くなれたのかな
四試合戦い抜いて、実感する。
今日 18になったんだ――
最終結果は、太一と千早の同点一位。それじゃ優勝賞品は、とドキドキハラハラする太一だが、千早は目の色を変えて決定戦をやると言う。但し、会場利用時間切れのため、これで解散。太一が礼を言い、最後に皆で記念撮影。
おれは 強くなれたのかな
太一が人気のない部室に佇んでいたところ、千早がカーテンを新調するため現れた。暫し無言で窓の外を眺めていると、千早が急に「太一杯一位決定戦」をやろうと言い出した。太一はそこから、小学生の頃を思い浮かべる。
「小6のとき 学校でかるた大会やったよな あのときさ 新のメガネ なくなったじゃん」
静かに切り出した太一に、懐かしそうに相槌を打つ。
「あれ 取って隠したの おれなんだ」
畳に片膝を立てて座り、下を向いて告白する太一。豆鉄砲を喰らったような顔の千早。真実を知り、慌てる。
「…… た… 太一… 太一だったの… ダメじゃん ズルいじゃん」
新に卑怯と言われ、千早に嫌われたくないからと口止めしたのだった。
「…… うん… ずっと ずっと 卑怯じゃない人間に なりたかったんだ」
太一は仰向けに転がり、千早から隠すように、目元を覆っている。千早は太一に視線を向け、静かに聞いている。
「好きなんだ 千早が」
memo
メインは太一の誕生日、太一杯。参加者は瑞沢部員に、原田先生、広史さん、筑波弟三人、持田先生、読み手として須藤、甘糟、ヒョロ、真琴、理音、ヨロシコ、佐々、他は白波会の皆さんらしい。読まれていた札は、何だかこれまた暗示っぽい「はるすぎて」「たきのおとは」。礼を言う太一に、皆は何か感じたのだろうか。これで最後、的な。
千早が第23巻第119首で新に言った「手に入れたいものほど手放すの かならず取ると勝負に出るの」は、同じ白波会の太一にも共通するのだろう。だから、高松宮杯での太一は持っていた「ちは」札を新に送り、攻めて取ろうとしたのに、「ちは」が読まれる前に試合に負けてしまった。札は最終的に太一の陣に戻っていたことになる。この暗示が今後どう展開されるか。
というわけでついに、もろもろの太一告白キター、なわけですが――