千早が図書室で勉強していると、太一が入って来るのが見えた。気付かれないよう逃げる。
ダメだ 私まで休部してるなんて太一が知ったら負担になる ダメだ ダメだ
かるた部は総当たり戦で練習中。西田は田丸が苦手で二戦二敗。二人の勝率は同じなので、直接対決で勝っている田丸の厚かましさが増している。大江達が下級生に指導している時も、横から口を挟んで来るなど、田丸の困った言動は相変わらず。
田丸のことで不満が渦巻く一年生部員をどうにかしようと、まずは花野が原を捕まえ、一緒に昼食。「噂のイケメンの先輩もいないし」と愚痴る原と花野は意気投合。西田と筑波は、美人が多い吹奏楽部との合同合宿をエサに、橋立の引き留め作戦。
大江が部室に行くと、波田が百人一首の暗記に勤しんでいた。天然パーマのことで悩む波田に、「ちぎりき」の清原元輔の頭髪ネタを面白おかしく話す。かるた箱にある「おおえやま」の札が目に入った。小式部内侍 大江山 いく野の道の 遠ければ まだ文も見ず 天のはし立
大江山は遠く、行ったこともないし、母からの手紙も貰っていません。もちろん天橋立も見たことがありません――という歌。母の助けなどなくても、私は私の才で歌を詠めます――という意味である。
”千早ちゃんがいてくれたら” ”真島部長がいてくれたら” どうしてもそう思ってしまうけど 私は私のやりかたでやればいいんだ 憧れの才女 小式部内侍のように
部活動の時間。駒野が指導を始めると、またもや田丸が口出しして来るが、大江がパンと手を鳴らして遮る。
「3年生が話をしています あなたが話す番ではありません」
無事に駒野の指導が進み、原が膝が痛いと言い、波田が野球用プロテクターを着用しているのを見せる。そこから話が盛り上がり、一気に打ち解ける。しかし、田丸は急に「用事があるから」と早退。自分が会話の中心になりたい、全部自分の話に持って行きたいタイプなのだ。
一進一退の状況に、大江と駒野は溜息。
「部長と千早ちゃんは… 月と太陽みたいでしたよね……」
寂しそうな大江に、駒野は言う。
「僕はがんばれるよ 笑わないでね 僕の月も太陽もかなちゃんだから がんばれるよ」
その言葉に大江は涙を零す。
新の藤岡東高校かるた部は、栗山先生のコネで富士崎高校との合同練習に来た。そう言えば、と桜沢先生が口を開く。
「北央の子が言ってたんだけど 真島くんと 綾瀬さんが かるた部辞めたって……」
memo
千早が目指すのは日本史教諭と思ったら、今回は「国語便覧」を手にしている。まあ、このあたりはまだ受験勉強の一環か。太一のことで「負担になる」とは、ヒョロ(=北央の子w)に言われたことが大きな影響をもたらしていそうだ。自分が傍に居ると太一が気負ってしまうと。かるた箱の「おおえやま」の横にあったのは「かぜをいたみ」。「3年生が話をしています あなたが話す番ではありません」は、第9巻第50首で菫が入部した時にも出た台詞。