千早と太一がかるた部を辞めたという情報に、新はショックを受ける。理音と対戦中も、頭がいっぱい。
辞めたって… 本当やろか せめて それだけでも確認…… 本当やったら とんでもなく悩んでるってことや 千早と太一が……
二試合目、新は日向と対戦。日向が札に集中し、理音が掛け声で、一試合目と役割が交代。富士崎には、実力とリーダーシップ両方を持つ生徒がいない。実力は理音、リーダーシップは日向と分かれているので、ダブルリーダーの形を目指しているのだ。強い新と対戦する場合、日向は勝負に集中するエゴイストに、もう一人の理音は声出し担当に、と桜沢先生は指示している。
瑞沢は…… 圧倒的なエゴイストと 圧倒的なリーダーのチームだった 北央のあの子じゃないけど あの二人を欠いて どう戦うの 瑞沢は――
三試合目の相手は、またもや理音。藤岡東の三年生は新一人なので、声出しも新の役目であろうが、理音が強くて集中しなくてはならない。そこで後輩が「と、取られたけどぉ、次は取るぞー」と声を絞り出した。新が覚悟を決める。
「よし 声出すの慣れてないけど 練習させてもらいます 藤岡東 声出していくぞ!」
おっしゃああ、と仲間から声が返って来た。あっ、チームっぽい、と新は感じる。チーム――小学生の時の三人の姿が浮かぶ。
富士崎高校からの帰り道。新は頭の中でポイントを整理する。
瑞沢も 最初はこんなんやったんかな そんで富士崎に勝ったんやろう? 信じられん どんな練習したんや? 太一 千早 すごいことやが
しかし、桜沢先生からもたらされた情報。心配するが、二人の居場所は遠い。富士山に夕日が沈んで行く。部員が気付いて撮影し、メールを送るなどと賑やかになる。
周回遅れのチーム作り 千早と太一にもらったものを返すんや 二人とまた 同じ景色を見るんや――
千早にメールが届く。差出人は新で、宛先は太一と千早。件名は「かるた部作ったよ」。近江神宮で会おう、と部員達の画像が添付されている。
弾かれるように 1年のころ 太一が言ってくれた言葉を思い出した 『新はかならず戻ってくるから 強くなって あいつを待とう』
太一も新からのメールを見る。周防から声を掛けられる。
千早はメールを見て、泣きながら決心。
太一はかならず戻ってくるから 強くなって あいつを待とう
memo
富士崎合宿で情報を得た新が、千早と太一にメールを送ったものの、退部話に触れないのは優しさか? 登場した札は「はなのいろは」「きりぎりす」「むらさめの」「やえむぐら」「あらざらん」。
第27巻終了。蓮華草の花言葉は「あなたと一緒なら苦痛がやわらぐ」「心がやわらぐ」。どん底にいる千早をせめて慰めようという意図でもあるのだろうか。袖の歌は第139首より「風をいたみ」。巻末四コマ漫画は、葵は人気、菫は普通。