原田先生が白波会に来ると、千早が久しぶりに顔を出している。太一退部に千早休部と、弟子から情報を得る。
千早は虚ろな様子でかるたを混ぜ、対戦相手にも不審がられる。原田が来て、正面の対戦相手が変わった。千早は原田に派手に叩きのめされる。
「千早ちゃん どんなに調子悪くても また来なさい いつでも君には全力で取るよ」
帰り道で千早は反省。調子が悪い時に自分がどうなるか、札の重さ、冷たさ、痛さ。
刻むんだ
千早は勉強するのが習慣付いて来た。休部するだけで、成績は爆上げ、体力も持て余している。かるた部の窓から練習の様子を覗く。一試合終わり、皆が「感想戦」を始めた。駒野、西田、大江は「三年生の顔」をしている。
部室前に座り込んでいると、深作先生が来た。ちょうど聞こえて来る清少納言の「よをこめて」が好きだと言う。
夜をこめて 鳥の空音は はかるとも 世に逢坂の 関はゆるさじ
千早は先生に気持ちを吐き出す。
「私 すごい集中して 勉強に逃げてたんですけど 勉強すればするほど 本は 言葉は 文字は こんなにはいらないなぁって……」
かるたの読みを聞きながら思う。
31音でいい 6音でいい 5音でいい 4音でいい 3音でいい 2音でいい 1音で
「せ」の札をぴっと取る、イメージ。
全国大会東京予選の日、千早は会場に来ていた。
札はまだ 黒いかもしれない でも 最後の1年を みんなと戦いたい
ところが、千早は袴姿なのに、部員達はTシャツ姿。参加校が増えたため、着替え場所もない。ルールも大幅に変わり、この日は一次予選で、別の日に二次予選。メンバー表も提出済みなので、千早は表から漏れた最下位の十将。そんな厳しい対応だが、千早に背中を向け、大江達が泣いている。駒野や西田も喜んでくれている。
みんな ごめんみんな ごめん 最後の1年を みんなと戦いたい
memo
久しぶりにかるたに触れる千早。原田先生、速攻で恋愛問題と断定。しかも、太一が千早にふられる前提。千早が重いと取り落としたのは「わすれじの」。吹っ飛ばされているのは「こころあてに」など。先生との対戦でミスしたのは、「なにわえの」と「よのなかは」で、恋に悩む歌と現状維持を願う歌。
深作先生が「よをこめて」について話すのを遮るかのように、語り始めた千早。「逢いに来ることは許されない」という内容を意識してのことか。