新は南雲会での後輩が入学して来たので、かるた部創設を申請。村尾が高校選手権運営に携わり奔走していること、自分をかるたの世界に引き戻してくれた千早のことが頭にある。袴姿で各学年各教室を回り、かるた部への勧誘を始めた。由宇には三年生なのに今更団体戦かと呆れられる。
「わからん でも いまおれは チームを作らなあかん気がするんや じいちゃんが生きてたころはさ 由宇よく手伝ってくれてたのぉ おれにとっては あれも チームやったよ ありがとの 由宇」
由宇が加わろうと申し出かけたところに、希望者が三人も現れた。地域柄、かるた経験者は多い。
集めよう風を 千早と太一がやったように できる おれにも ここは福井なんや
千早は相変わらず不調。田丸が練習試合の勝率で主将を決めようと提案して来た。生意気だと諫める花野だが、西田もどう対処すべきか決めかねている。
バラバラだ……! 思いのほか強い新入部員と 調子の出ないキャプテン 収める立場の部長もいない どうしたら こんなんで戦えんのか 東京都予選
突然、千早が土下座した。
「…… 休部させてください しばらく 私も かるたから 離…」
慌てる西田を、大江が止める。
「いえ 千早ちゃんが言い出さなかったら 私が言うところでした 集中できていない人が 同じ畳の上にいるのは迷惑です 目が覚めないうちは 戻って来ないでください お勉強でもしててください」
千早は身体を起こし、目も合わせず部室から出て行った。大江は泣きながら訴える。
「皆さん 私たちは 全国大会前年優勝校の瑞沢です だれが欠けても いっ… いなくても あの優勝旗に トロフィーに 恥じない戦いを絶対にするんです」
深作は部室の前でしゃがんで泣く千早の姿を見つける。
学びなさい いましかない 学びなさい 大事なものを すべてを
memo
扉絵で微睡む千早と共に波紋のように描かれている歌は、文字が大きい順に「かささぎの」「ちはやぶる」「こいすちょう」「たちわかれ」「なげきつつ」「せをはやみ」。また、練習試合でも「こいすちょう」、そして恋に関する「ゆらのとを」が読まれている。
今回も引き続き、舞台は学校。図書室で千早が手に取ったのは「図書館の海」と言う本。私は読んだことがないので関連性は分からないが、千早の感想で出て来る「ミスリードさせられた」は私達読者へのヒントっぽい言葉だと感じる。