太一が担任に進路指導で言われたこと。
勉強時間の確保はできているか? 平日6時間 休日13時間 絶対量を確保するんだ 真島 絶対量を確保した者に 運は引き寄せられる
千早は集中し過ぎて、視野が狭くなっている。千早が自陣を囲い、理音がその上から押した。しかし、空札。「共お手」の筈が、理音はモメられるのを覚悟で、千早に札を送って来る。黙って受け取る千早。これで1-7なので、あと一枚取られたら終わりとなる。
須藤が太一に声を掛ける。
「綾瀬もヤベーな もうダメじゃね さすがに相手が悪いと見えねーのかな」
太一が「え?」と反応し、須藤は言葉を続ける。
「綾瀬はときどき読まれる札が『浮いて見える』って」
それは視線の先にいる原田先生が、かつて言ったことだった。
完璧な暗記によって場にある札が 浮き上がってこなければならない
原田の隣では、駒野と西田がノートに書き付けたメッセージを太一に掲げている。
西日本代表は 綿谷新!!
真後ろにいる千早を思いながら、メッセージに見入っている太一。
千早 千早 原田先生だ そのイメージをくれたのは 原田先生だ 懸けてきた絶対量でいえば 誰が勝てる? 千早 おまえだって
太一はわざと動いて、札を後方に散らばした。
「すみません そっちに『わた・や』行ってませんか」
千早が振り向き、太一の頭越しに掲げられているメッセージに気付いた。袴姿の新が厳しい表情で、水の中を歩いて来るイメージ――
目の奥が 水を飲んだみたいだ
ここでやっと間を取り、場を確認。
1-7… 1-7… なんか… まっすぐ走ってたのに トンネルに入ってたみたいだ 山ちゃんの 山ちゃんの勝つトンネル でも 山ちゃん さっきのは 共お手だったよね?
須藤は太一が、まさか周防のように、千早の試合と枚数を合わせてきたのではないかと疑う。太一は周防の言葉を思い出す。
きみは持ってるものを無視しすぎだ
次の「たまのおよ」を太一が取った。千早も取ったのを確認する太一。「たち」「たれ」のどちらかを送る場面だが、「ちは」を送る。須藤は2-5で有利なのに、太一が「あと3枚」と呟いたことに苛立つ。
間を取るため、同時に立ち上がる太一と千早。
絶対量を確保した者に 運は引き寄せられる 千早 おまえはおまえで引き寄せろ おれには運は微笑まないから 新のところへは自分で行くよ
memo
千早が1-7、太一が2-6と、ほぼお揃いの劣勢。第35巻第179首では「勝ちに来たんじゃない、翻弄しに来た」などと腹黒さを印象付けていたのが、原田先生の格言を思う辺りではすっかり白くなり、ここに来て本気を見せ始めた太一。
前巻第180首に前振りがあるが、千早が原田先生の格言「完璧な暗記によって場にある札が浮き上がってこなければならない」のことを言っていたと聞き、太一がとても驚いている。その意味がより分かり易く描かれているのは次巻。周防の「きみは持ってるものを~」は第31巻第161首。
千早が新の勝利を知る場面、いつものお約束のように頬を染めるでもないので、視野が狭くなっていたのがただ目覚めた! という感じ。高校選手権団体戦で千早と新が戦っていた第163首で、「ちはやぶる」の札の時に千早が太一の存在に気付いた時と似た表情。
登場した札は、空札だった「はなさそう」、太一が取った後に見入っていた「たまのおよ」、畳にまだ残っている「たちわかれ」「たれをかも」「ちはやぶる」。
第36巻終了。歌は第185首より「み吉野の」。表紙に描かれている稲穂に花言葉なんてあるのか? と一応調べてみたら……あったw 稲または稲穂は「神聖」とのこと。四コマ漫画はここに来てやっと初メインの筑波で、かるたで苦悩する筑波と順調に昇級している弟達。