近江神宮の最寄り駅まで戻って来た太一。女子トイレに枕と傘の忘れ物があったと、駅員が話しているのを耳にする。
名人戦は周防の四連取。須藤が積極的に札を拾いに行く。
体が思うように動かなくても 目が悪くても ここにいてほしい いろんなかるたがあるはずだ 周防さんだから 見せられるかるたがあるはずだ
かるた界の重鎮は、三試合目で周防が札を中央に寄せて、戦局が変わったと見ている。新の陣は札が幅広く、周防はコンパクトと対照的。周防から札を送られ、新の主戦場が自陣に固定され、目線が下がって敵陣に手が伸びなくなる。更に、新の最大の武器は払い手のスピードなのに、周防陣は狭いので加速がつかないのだ。
新は「じいちゃんならどうする?」とばかり考えている。
どうしても そう思ってしまう 重ねてきたイメージを手放せん 脱げん ほれでは勝てえんかもしれんのに 脱ぎたくない じいちゃんのかるたで勝ちたい 自分のかるたなんてどうでもいい
新の脳裏に「大丈夫?」と千早が問いかけて来る。客席に目を向けると、冷たい視線を向けられているように感じる。
千早 千早 俺は 怖い…
新は子供の自分が周防と対峙しているのをイメージしてしまう。
千早は囲い手の下から、若宮に払われる。千早は立ち上がって身体を伸ばし、声を出しながら深呼吸。そこで新が襷を使っていないことに気付く。
「えー!? いらなかったら返してよー 宮内先生の襷ー」
新は少しだけ我に返る。千早はエールを送るように拳を握る。自分の好きにしていい、と。
千早の派手な深呼吸に、新も控え目に真似をする。千早の呼吸方法は、太一の教え。
息をしろって言ったら たいていの人は思いっきり「吸う」けど 大事なのは まず吐くこと 吐き切れ
太一が試合会場に到着。新が劣勢なのは、動画で見ていた。
お前の本性は知ってるよ らしくなく 萎縮してんなよ
新は呆然。
俺はなんのためにここにいる? 名人になるため 夢をかなえるため それだけ?
太一が部屋に来たのが、新の視界に入る。太一は前に話していたのだった。
千早がもし夢を叶えるなら クイーンになるんなら 一番近くでその瞬間を見たい
千早も顔を上げ、太一を見る。一方、新は険しい表情。
俺が食い破ったんだ 太一の夢を
太一は新を見る。
ガキの頃からの友達も 18枚差で踏みつけて 一番強くあるために 力をふるう単なる鬼なんだよ お前は優しい人間じゃない 思い出せよ 相手が永世名人であろうとも 目にハンデがあろうとも 5歳相手でも 手加減しない男だって
memo
第四試合、自身のかるたについて悩み続けている新。太一の姿を見て鬼になる兆しを見せているが、つまり新のかるたとはどういう形態を言うのか。
太一の登場について、千早からすれば、自分を見に来てくれた、と解釈するだろう。第31巻の三位決定戦での登場時のように大きなコマではないが、千早の表情はそれと近い。新の方は、回想する言葉から、太一の夢を破ったと険しい顔。しかし、肝心の太一は、新のことばかり考えているというのが面白い。
千歳の忘れ物が残されているのは大津京駅。第45巻第229首にて、太一が千歳に追い付いたのが、大津京駅から京都駅へ移動する電車内。更にその前の第44巻第225首、千歳が近江神宮を後にする場面では、傘をさしているのは確認出来るが、手元は描かれていなかった。お母さん持って来て、と連絡が来るのか。それとも忘れたのを明確にしただけで、千歳が愛用枕無しで眠れる切っ掛けになるのか。
読まれた札は「さびしさに」「みよしのの」「あさぼらけ・あ」「うらみわび」「なにわがた」「たまのおよ」「かくとだに」「やえむぐら」。
第46巻終了。おまけ4コマは、出来る男ポカ作と桃ちゃん。勿論オチあり。袖の歌は最後の場面、太一が来てから読まれた「やえむぐら」。表紙で描かれた水仙の花言葉は「うぬぼれ」「自己愛」。