第三試合の大盤係は田丸。「あなたもここに来るんでしょう」という桜沢先生の言葉を思い返し、浦安の間の空気に呑まれる。大盤に札を並べてみると、千早の思考がとめどなく溢れて来て、視界が歪む。
千早が九頭竜の読みでよく動けている、と若宮が気に掛け始める。
思惑がわかる 全部じゃないけどわかる がっぷり四つ バランスを崩したら 落ちるしかない崖の上で
名人戦は周防が連取。周防はC級優勝した大会で、九頭竜の読みを体験していた。「ありあけの」を、周防と千早が取る。「ありま」もあるのに、二人とも二字目で取った様子。「あ」の札が続くが、周防は九頭竜の読みの美学として、二字目のコンマ秒の単位まで解説を聞いてあった。千早も音源を聞き、準備が出来ている。
試合前、大江の方が大盤係にふさわしい、と田丸が言い出した。大江は諭したのだった。
「千早ちゃんの夢をご存じですか クイーンになること… 『かるたの強豪 瑞沢高校』です だから後輩を選んだんです 皆さんに戦う姿を見ていてもらいたい 熱意をつないでいってもらいたいんです」
田丸は目の前の試合に見入る。
見ろ 見ろ この景色を 思考を 勇気を 一番近くで
新は苦戦。周防に五連取されていた。九頭竜の読みは初めてだ。
大山札以外 下段は全部 周防さんが一字で取りにくる なんや そのイメージ
周防が空振り。周防は兼子が会場内に居ないと見て、外側に散っていた札を内側に集める。新が周防の弱点を確信。
目なんだ 目なんだ やっぱり
周防がやり方を変えたのは初めて。
プライドはあるんだ 僕だって 本当はこんなことしたくない でも 見にきてくれてるんだ 親より大事に思ってる人が 名人位が必要なのは 僕のほうだ
memo
三試合目中盤。準備が出来ていた千早と周防、出来ていない新と詩暢、ついでに田丸。新は試合前に読んだ太一からのメールをヒントに周防の弱点に気付くが、その対策については未だ描かれていない。
登場した札は「さびしさに」「あらしふく」「わすれじの」「やえむぐら」「うらみわび」「いにしえの」「ありあけの」「あきのたの」「はるすぎて」「やすらわで」「わたのはら・こ」「あわれとも」。