B級決勝戦に挑んでいる太一は、この日六試合目。前の試合の暗記が抜けきれず、ミスも出る。並んでいる札全てにそれぞれの作戦を組み立てているが、反応が遅れる。
速く 速くと思うのに 腕につながらない もっと動けよ! 頭は動いてんだよ!! もっと……
太一は負けてしまった。対戦相手の戸田は、強豪校富士崎の三年生。
3枚差までよくやった 準優勝だ 十分だ
どうにか納得して観客席を見れば、部員達の絵に描いたような落胆ぶり。
「……く 悔しい 悔しいよな じゅ… 準優勝がいちばん悔しい…… ぐ……」
自分のことのように悔しがる西田に、涙を流す千早達。太一の目にも涙が溢れ、零れ落ちそうになる。が、何とか堪えた。
泣くな おれはまだ 泣いていいほど懸けてない ”悔しい”だけでいい
滋賀から戻り、かるた部は走り込みで体力作り。疲れて来ても集中力の切れない、優勝をかけて十時間戦える体力をつけるため。西田としては、もっと楽をして強くなりたい。だが、それが自身の駄目なところだと分かっている。
真島…… 真島に 実力で抜かれたとは思ってねえ でも 離されるな ついていけ ライバルだ ライバルなんだ
千早は最近、若宮が夢に出て来ると言う。全国大会で新にも会えたのに、新は夢に出て来ない。それを太一は背中で聞く。
すみのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ
大江曰く、夢と言えばこの歌。「昼も夜もお逢いしたいのに、夢の中でさえ人目を避けておられるのか」というロマンチックな解釈に、千早は新を連想する。
逢いたい 夢じゃない場所で
新は菓子折りを持って、ある家を訪問。新をずっと待っていた主が、笑顔で迎えてくれた。
「栗山先生 僕を福井南雲会に入れてください」
memo
太一のB級決勝戦。思えば、太一が涙を流す場面はまだないね。試合中に読まれた札で描写があったのは「なにわがた」のみ。他に登場するのは、新を思い出す千早にかなちゃんが詠んだ「すみのえの」。