若宮から二枚連取したとはいえ、相手残り7枚に23枚と大差を付けられている千早。だが、観衆から見ても戦意ダダ漏れの千早に、若宮も本気を出して来た。
千早 ついてない 流れが来たと思ったのに 苦手な大山札が続くなんて でも 場の札はもう30枚を切った 千早 行け 千早
太一の読み通り、狙い札が絞り易くなってか、千早が三枚目を取った。千早は飛ばした札を拾いに行って気付く。取られてばかりで、席を立つ機会が少なかったのだ。身体を動かしてみる。
固まってた身体が 動いてきた …… ああもっと 自由になりたい 競技線の中で 身体がこわばるほど強い相手を前にしても 自由に 自由に 自由に うまく言えないけど 強いってそういうこと……?
結局、千早が5枚、若宮が20枚で決着。若宮は圧倒的な勝利を収めたものの、千早の名を頭に刻み込んだ。
綾瀬千早 千早 ちはや 次は一枚も取らせない
千早が大敗したことに加え、千早よりも上がいることを知り、太一も気持ちが沈んでいる。千早を心配しつつ、いつものように即寝していて欲しいとも思う。しかし、ソファに一人座る千早は涙をぼろぼろ零しながらも、反省のイメージトレーニングを繰り返していた。数か月前はまだクイーンが同い年であることも知らず、本気と受け取れないくらいだったのに。
ああ 今日だ いまやっと 千早の夢が 本物の夢に
夢。太一の頭に、新の「次は試合で」というメッセージが浮かぶ。
個人戦A級決勝の須藤対若宮は、12枚差で若宮の優勝。しつこく素振りしている千早を、大江が呼びに来る。太一がB級の決勝戦で戦っているのだ。太一は必死に札を取りながら考える。
原田先生 おれにもできるかな 負けながら 泣きながら 前に進むことが 新に 向かっていくことが
memo
千早と詩暢の試合終了。歴史の生き証人、太一。読まれた札は「きみがため・は」「あさぼらけ・あ」「しらつゆに」。強いってそういうこと、で舞っているのは「みちのくの」「たごのうらに」。その後、太一が廊下を歩いている時に読まれているのが「こころあてに」「むらさめの」、B級決勝戦で登場するのは「おとにきく」「よをこめて」。