千早は攻めがるた。若宮は守りがるた。自陣の札が多くなっている千早に、現在の状況は不利。太一が見守る中、千早は動けなくなってしまう。
どうした!? なんで攻めない!?
若宮は千早に冷たい視線を送った。
ああ またや 最初はみんな威勢ようぶつかってくる でも そのうち一人でかるたしてるみたいになる まあ べつにかまへん 早いとこ終わらせよ
アクシデントで部屋の電気が消えた。再び点灯した時、千早は太一と宮内先生の存在に気付く。
太一 先生 でも――… どうしていいか わからないんだよ 私がやってきたかるたじゃ一枚も取れないんだよ こんなの初めて――…
小学生の時の新を思い出す。千早は新の速さに全く歯が立たず、せめて「せをはやみ」の札一枚だけでも取ろうと飛びついたのだった。
千早は流れを変えようと立ち上がり、腕を組んで相手を見下ろす、という須藤の真似事をしてみる。そこで初めて、若宮が左利きであることに気付いたという体たらく。
うっわ~~ いまごろ気付くなんて 私どんだけテンパってんの~~~ 12歳の私に 気持ちで負けてどうする
若宮は千早に気力が戻って来たのを感じ取る。千早はまた攻め始めた。原田先生の教え通りだ。
守りに自信のある人が 自陣のいちばん深くを抜かれる それがどれだけショックなことか 流れはそうやって引き寄せるんだ
二人の手がぶつかった。若宮が譲って札を渡そうとするが、千早は同時だと言って断る。
ここは近江勧学館 名人戦もクイーン戦も この同じ畳の上 まぐれはいやだ この子から取る最初の一枚が 一月のこの席につながってる
思い切り息を吸って吐く千早を、若宮が見る。
…… 変な子……
そして千早はついに、敵陣利き手側にあった得意札「ふくからに」でやっと一枚目を取った。若宮が一字決まりを抜かれるをの初めて見た、と観衆が囁く。千早は「ちは」札を送り、敵陣を攻めてそれも抜いた。
この一枚が いつかの クイーンにつながってる
memo
千早と詩暢の試合中盤。千早は観客席の太一と先生に気付き、かるたを始めた頃を思い出して光を見い出すが。読まれた札は「おおけなく」「かぜをいたみ」「ふくからに」「ちはやぶる」。