若宮が悪い流れを断ち切り、六連取。皆は取りの鋭さに驚いている。刃物みたいだとか、居合みたいだとか、そんな物騒なものではないと千早は否定する。
刃物を向けるような気持ちで 向かっていったりしない
小学生の時に原田先生が言っていた。
百人 友達ができたと思って 仲良くなりなさい
テレビを見ながら涙を流す千早。駒野や西田には理解し難い。太一は、千早が居ても立ってもいられず、練習したいのだろう、と考えていた。しかし、それは違う、と思い直した。千早に以前言われたのだ。
来年はA級で みんなライバルでしょ!? 太一こそ見てないと
飛んで来た札が若宮の背中に当たり、彼女の手元が狂った。若宮よりも速く札を払ったということだ。周防であった。
障る 強さの気配
若宮が13枚差で勝利し、クイーン位二連覇。山本は控室に入り、東京から20人も応援しに来てくれたのに、と落胆。一頻り悔しがってからふと襖を開けると、北野先生と皆が心配そうに勢揃いしていた。山本は涙を浮かべ、北野に頭を下げる。
「先生 もう一度ここに来たい ご指導お願いします」
テレビでは若宮のインタビューが流れている。考え込む千早。
ダメだ 私はまだ 詩暢ちゃんほどにも かなちゃんほどにも かるたとつながれてない
千早は太一から札を借りようと声を掛ける。が、太一はテレビを見据えたまま。代わって西田が千早に怒る。
「これからが本番だよ 男には 名人戦でしか 今日しか 周防久志は見れないんだ」
名人戦は三戦目に入っており、二戦目までは名人の連勝。それぞれ5枚差、13枚差で、クイーン戦の枚数差と同じだった。太一は以前、和菓子を配っていた周防に声を掛けられた時の悔しさを思い出す。
きみはA級の人? じゃないならあげない
西田は周防は千早にとっても重要人物だと言う。
「若宮詩暢になろうとするより 周防久志になろうとするほうが おまえは近い」
周防が一枚目の札を衝撃の速さで抑えた。テレビ解説が流れている。
「おわかりでしょうか 二字決まりの”かく”に一字目から手が伸びて―― 一字決まりは一般的に”む・す・め・ふ・さ・ほ・せ”の7枚ですが 名人はインタビューにこう答えています 自分には 28枚だと――…」
memo
クイーン戦終了。読まれたのは「なにわえの」「かくとだに」。ユーミンが師匠に頭を下げるシーンは美しい。そして、「周防久志になろうとするほうが~」と言う肉まんくんの洞察力って、何気に凄かったりするのでは。
第8巻終了。桜の花言葉は「精神の美」「優美な女性」。袖紹介の歌は第45首で千早から新に電話した時に登場した「かささぎの」。巻末四コマ漫画のネタは、四コマなしに怒る千歳、西田姉がヒョロにロックオン。