かるたを速く取るのを止めろ、と言う原田先生。
「速くなくてもいいんだよ 千早ちゃんの得意札は何枚ある? 5枚? 10枚? ものすごく速く取れる札があっても 残り全部取られたら かるたは負ける 速さへの執着を捨てなさい」
原田が千早に掛ける言葉を、周囲も注目して聞いている。
原田先生が本気になってる クイーンになるためのかるたを教えようとしてる――
駒野は気付いた。千早は自陣右側と敵陣左側は駒野相手にほぼ百パーセント取れるが、他エリアだと確率が落ちる。大江には、雰囲気が似ている歌だと、お手付きが多いとも指摘される。「ちはや」札が赤に見えるのと同じように、詠まれた「緑」の色の濃さの違いを考えることを勧められる。
ああ 私 悲しかったんだ ”速さ”は私にとっての”かるた”だったから――…
千早は図書室に行き、百人一首の本を手に取り、学ぼうとする。
机くんの良さを かなちゃんの良さを
千早は初めてのA級公式戦。一回戦の相手は、かなり年上と見受けられる金井桜。
ドキドキしてたらダメだ 今日はテーマを 速く出すぎず お手つきのないかるた 自陣左右 敵陣左右 バランスよく取るかるた
なのに、身体は勝手に動いてしまう。速さがミスを呼ぶ。いつの間にか攻めにくい札の配置になってしまっていた。金井にも言われてしまう。
「ラッキ☆ 速いだけの子に当たれて」
memo
白波会で先生に「速く取るな」と諭され、部活で机くんにも弱点を指摘され、それを意識しつつ初めてのA級公式戦に挑む千早。大江母、太一だけではなく、袴の着付けに興味を示した机くんにもロックオン。登場する札は、部活で「ちはやぶる」「ひともおし」「わがそでは」「ほととぎす」「なにわえの」「なにわがた」、A級戦で「かくとだに」「うらみわび」。