新はトイレに立ったついでに、試合会場前を通り、そのまま座り込む。
若宮は小さい頃を思い出し、気分が悪くなる。同じ年頃の女の子と楽しくかるたを取っていたのに、練習相手に年上の少年を宛がわれ、一人になるほど強くなるからと、同年代の仲間を排除されてしまっていた昔のこと。
気持ち悪い 帰ればよかった でも
千早と理音が気になる若宮。身を乗り出してしまう程に。並んだ札は理音に有利だったが、それは前半。後半になって一字決まりだらけになり、千早が勢い良く取って行く。理音は「負けたくない」と焦る。
外から会場を見詰める新。
詩暢ちゃん チームを持たんおれらは 自分が強くなることしか考えとらん かるたを好きなのはまちがいないけど どうやろうか? おれらの好きなかるたの世界を豊かにしてるのは 人を増やして 教えて 励まして支えてる チームを持ってる人たちのほうやないんか?
試合を見ながら考え続ける若宮。
関係ない うちには関係ない だれもうちには本気にならん だれも
「お待ちください!」と審判を求め、複数の手が上がる。千早、理音、逢坂、夕部など。若宮の胸が高鳴った。
筑波の負けが決まった。瑞沢はゼロ勝二敗。太一が声を出す。
「3勝 3勝するぞ みんな」
memo
二組の対戦が終わった。読まれた札は「いまはただ」「おおけなく」「はなのいろは」「こころにも」。新は詩暢に貸していた服に着替えたが、何とも思わんのん? まあ、目の前で気にすることなく、かぼちゃぱんつ晒して着替え始めちゃうようなコだけどさ。