太一の対戦相手は、ヒョロが吉野会大会B級決勝で負けた豪徳寺。
なにやってんだろ おれ なにやってんだろ 名人になりたいって みんな思ってんのかな おれは修学旅行休んでまでなにになりたいのかな
太一が戦っている姿を見て、太一母は苛々。
太一 名人位クイーン位予選!? なにそれ? かるたの名人なんか目指してたの? 太一 ありえない
太一母が花野が後輩と知り、試合が終わったら連絡して欲しいと頼み、ひとまず立ち去る。
修学旅行なのに、気が入らない千早。百人一首の殿堂、時雨殿でも電話を見詰めている。
太一…… 試合はどうなってる? 勝ってる? きっと筑波くんとか菫ちゃんが教えてくれる…… 新のほうは? いま何試合目だろう? 西日本のほうに知り合いっていないから 新が教えてくれないと…… どうがんばってるの? 新 太一
堀川は千早の携帯電話を奪い、電池を抜いてしまう。千早のために修学旅行委員を代わり、千早のために見学施設を考えた。泣く堀川に、千早も大泣き。ちゃんと楽しむことにする。
千早は大江と遭遇し、天徳内裏歌合再現展示についての蘊蓄を聞く。この時に詠まれたのが「こひすてふ」と「しのぶれど」で、天皇が「しのぶれど……」と呟いて勝敗が決したと言う。
「心を動かすことを目指して 競い合ったんです」
はっとする千早。
競い合った…… 吉野会大会のとき 太一の心はいちばん近くにあった 名人を目指してた? ちがう ちがう 太一が修学旅行にいないのは ――”千早に勝ちたい 千早に勝ちたい 勝ちたい”
東日本予選会場。太一は勝利。豪徳寺には勝って当然で自分は負けたのが不思議、と言い訳するヒョロに怒る。
「おまえ強いのに あんなのに負けてんじゃねーよ」
ヒョロは太一を見送り、下を向き涙を流す。
ちがうんだ ちがうんだ 負けたのは おれが弱いからなんだ 弱いってことを認められない 自分だからなんだ
やり取りを見ていた花野は、太一母に連絡する気になれなかった。太一母が待ち切れずに現れるが、花野が立ち塞がって建物内に入ろうとするのを阻止。
「あなただって かるたとか名人とか なんにもならないのわかってるでしょ? いまだけのお遊びにこんな――…」
怒る太一母に、花野は反論。
「い…… 一生やるかもしれないじゃないですか」
太一は室内から、母を泣きながら必死で止める花野を見る。
「真島先輩…… 先輩は 自分になりたくてがんばってるんです……!」
ますます怒る太一母だが、ここはかるたの聖地。暴言に反感を持った観客に負け、太一母は退散。
太一の三回戦の相手は、前評判の高いK大小石川。小学生の時に新に「卑怯なやつやの」と言われたことを考える。
自分じゃなくなりたい でも 自分になりたい
memo
修学旅行と東日本予選。時雨殿での解説に出て来た「こいすてふ(こいすちょう)」と「しのぶれど」は、第8巻第44首でかなちゃんが太一を見て詠んだ歌でもある。しかし、吉野会大会で千早が太一の心が近くにあったと思っていたのに、どんどん離れて行っている模様。試合での読み札の描写もまた、「たちわかれ」のみ。
第20巻終了。表紙は花シリーズではなく、名人とクイーンに練りきりと来た。袖の歌は今回の「こいすちょう」。巻末おまけにアニメ2スタジオレポ、ヨロシコのモテ道、猪熊夫妻、かなちゃん達の進路の四コマ漫画。