全国大会の引率は、鳥人間コンテスト見学ついでの柴田先生になった。顧問の宮内先生は、かるたに興味が無いのだ。
「神社である大会なんて お祭りみたいなものじゃないですか?」
駒野は成績が下がったことを宮内に注意される。千早は駒野に部を辞めないよう説得にかかるが、駒野にそのつもりはない。成績が下がったと言っても、2位から5位だ。千早は下から5位だ。
「順位とか最近気にならなくなったんだ 綾瀬は気にしたほうがいいよ 下から5位て」
基本的な配置ではなく、和歌に添って季節毎に配置したりと、拘りが強い大江。百人一首から離れるなら、ふと外を見て口にするのは万葉集の和歌。
茜指す 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る
現夫の領地にて、忍んで近くに来た元夫にドキドキする――という意味だ。
「近江神宮でだってすごくすごく勝ちたいですけど かるたが『歌』であることを忘れたくないんです」
宮内は部活動の様子を見て反省。百人一首の本を借り、かるた部の引率をすることにした。
大会会場へ向かう道中、千早は大江に教わった万葉集の和歌を思い浮かべていた。
「かなちゃん 私 かなちゃんに教わった日から 『ちはやふる』だけが真っ赤に見える 競技線の中で真っ赤なんだ」
小学生の時、新に「近江神宮はどんなとこ?」と訊いた。千早の頭の中で、高校生になった新が答える。
真っ赤やよ
その通りの建物が今、目の前にある。
memo
全国大会を控えての練習風景。かなちゃんが詠んだ万葉集。状況的には、太一の傍に居ながらにして新にドキドキする、と。新がまさかの来訪となるのを示唆、ってのもあるね。
練習中に登場したのは「よのなかよ」「おとにきく」「よのなかは」。