千早は通学途中に他校の男子生徒に交際を申し込まれる。断るべきだと言う大江だが、千早は未練がある。
「つきあってとか言われたの 初めてだもん これを逃したら もう一生言われないかもしれないもん」
初告白と聞いて「無駄な美人」だと呆れる西田。ずっと傍にいて綺麗だと思わなくなってしまったと言う駒野。
「うちの学校でモテないのは 真島くんがいつもそばにいることも大きいと思いますけど」
大江の見立てに、西田と駒野にはぴんと来ない。太一は不機嫌そうに一刀両断。
「いいんじゃね つきあったら」
その言葉で意外そうに振り向く千早だが。
「千早は経験しないとわかんないんだろ 絶対無理だって かるたをしてるおまえを知らない男とつきあうなんて 絶対無理」
そう言われても、既にその男からメールや電話がじゃんじゃん掛かって来ている。太一は千早から携帯電話を無言で奪い取り、勝手に着信拒否設定。
「着信拒否にしといたから 明日からは早起きして おれと同じ電車に乗れ」
大江は二つの歌を連想した。
しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで
こひすてふ わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもひそめしか
隠し切れない忍ぶ恋の歌。
うちの部のあんぽんたんにはわからなくても 私は理解しています 部長
千早は着信拒否にした男と同じ画面に表示されている「綿谷新・携帯」を見て、新のことを考えていた。
メールさえできない せっかく太一に教えてもらったのに 西日本予選で新は4回戦で負けた 新はどんな気持ち? どれだけ悔しかった? 話したいことがありすぎて
新は厳しい顔で考え事。かるた会の実力者達は欠席が多く、練習相手になる人材がいない。村尾の自宅を訪れ、説得にかかる。
「後悔 してるんです…… かるたから逃げてたこと その時間…… 長い時間離れてたらダメです 村尾さん 名人めざせんくなります」
村尾はその言葉に目を見張りながらも、茶化しつつ断る。
「……こ…… こわ~~~ もう その発想が怖い~~ 名人目指す以外のかるたがない~~~ 新 おれはもう そのレベルではやれん 遊びでやるとき声かけて」
新は千早と太一が福井にまで来てくれたことを思い返し、日を改めて村尾の説得に来ようと考える。
11月、名人位・クイーン位挑戦者決定戦。名人位は白波会の坪口広史と高徳院大学の武村敬一、クイーン位は翠北会の山本由美と明石会の逢坂恵夢との対戦で、武村と山本が挑戦者に決まった。白波会の面々の前に現れた坪口は明るく振る舞うが、原田先生の顔を見た途端に号泣。千早と太一も胸を詰まらせるのだった。
memo
千早が他校男子に告白され、静かにイラつく太一。かなちゃん曰くの「あんぽんたん」は、西田、駒野、千早。いや、ホントにこいつらあんぽんたん……