山本は千早が牙を剥いたのに気付いた。空札なのに飛び出して来る。
ガンガンに狙ってきてる なに? これまで丁寧だったのに まるで 圧勝すると決めたような―― 圧勝?
大江は選手が誰一人として「歌」を聞いていないのを悲しく思っていた。でも、10人もいない名人戦クラスの専任読手の声は、窓ガラスがないように響いて来る。願わくば千早にももっと「歌」を聴いて欲しい。
千早の気迫に、逆に冷静になって来る山本。千早は熱くなり過ぎて、得意札の聞き分けを間違えてのお手付き。山本はここが勝負どころと見た。
北野が外から窓を突然開けた。選手達は涼しい風を受け、北野の意図に反し、相手側がリフレッシュ。更に北野が山本に励ましの言葉を掛けるが、その場にいる皆も励まされることに。しかし勿論、山本の励みにもなった。
また 挑戦者になれるんだ
千早が取った……かに思えたが、山本が自分の取りだと主張。千早は言い争いに負け、山本の取りとなる。西田は気付いた。
も…… 戻ってきた……!? 伝説のモメユミが!!
どちらが取ったのか微妙な時に一歩も引かず言い争って「モメる」のは、あまり良いこととはされていない。山本は「クイーン」にはふさわしくないと封印していたのだった。
いいじゃないの いまは 「挑戦者」なんでしょ?
山本は千早が競技線から出ているなど細かな指摘でも口撃。千早が狙っている札も綺麗に払う。
なにか勘ちがいしてない? 自陣の一字決まりなんて 速くて当然なんだけど
一枚も取られたくない、と千早は思っていたが。
私はなにを 前クイーン相手に 私はなにを――
memo
東日本予選、引き続きユーミン戦。千早、思い上がってしまったの巻。登場した札は「めぐりあいて」「かささぎの」「ふくからに」「あいみての」「ちぎりおきし」「みちのくの」「せをはやみ」。