千早の対戦相手は、小6の立川梨理華。
軽い 身体全体で飛び出しても軽い 速い お手つきを怖がってない 耳もいい――……
取られ続けている千早を見て、太一も焦る。
千早より速いのか!? まさか―― 千早…… 競技線から下がってる――
苦戦していた千早だが、上手く取れた。
あっ… 合った! いま読手さんと呼吸が合ったー!! 「速く」じゃなくて 「ちょうどよく」取る できる人には簡単なことかもしれないけど 私には
立川が呟いた。小さな声だが、千早には明瞭に聞こえた。
「取ってるけど 遅いじゃん」
しかし、速いと言われて嬉しい彼女の気持ちが、自分と似ているので良く分かる。冷静にじっくり戦っていく。以前対戦して千早に速さのことを指摘して来た金井や、原田の言葉の意味をやっと理解する。途中、窓の外から原田先生の指令。
速く取っていいよ! GO!
それを機にスピードを上げる。まだ小学生の立川は半泣きになりながら、一生懸命取っている。
なんだっていい かるただってなんだって なにかを大好きになってほしい 自分を大好きになってほしい――…
千早は一回戦に勝利。原田が言う。
「ぼくは… 千早ちゃんに たくさんの武器をあげたいんだ ”感じ”だけじゃなくて 流れの読みも呼吸も正確さも かるたで一番大事なのは才能だ でも それにもレベルの差がある 一つだけじゃダメだ 武器がいるんだ クイーンや なによりいまの名人のような 天才に潰されないために」
その頃、公園のベンチで鯛焼きを食べる男が一人。
「やっと2回戦」
memo
東日本大会一回戦。読まれたのは「いまはただ」「はなさそう」「しらつゆに」「つくばねの」「きみがため・は」「ありあけの」「むらさめの」。外での観戦に途中から、須藤と対戦中の筈の肉まんくんが混じっている(泣)。