福井。新祖父の三回忌で墓参りする綿谷一族。祖父と父が喧嘩したせいで、新は東京に転校することになったのだった。友達も出来て良い経験だったろう、でもマメにメールをしないと忘れられる、と言う両親。新は携帯電話を見て、「かささぎみたいだねえ」と言った千早を想う。
わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもゐにまがふ おきつしらなみ
わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね
目の前に広がるのは大海原――わたの原。
千早 携帯電話じゃない おれらにとってのかささぎは
新は両親に、高校選手権に優勝したらお願いがあると告げる。
東京都予選準決勝。瑞沢の相手は、青春熱血系教師になった坪口が率いる朋鳴高校。千早は坪口に熱い視線を注いでいる。原田先生譲りの攻めがるたに、油断出来ないと焦る太一。原田が声を掛けて来た。
「まつげくん 個人戦は団体戦 団体戦は個人戦だよ」
太一なりに考えてみた。
団体戦は個人戦とはちがう戦い方じゃないか チームとしての強さ それを出せたほうが勝つ――!
千早は「強豪校になるには顧問がしっかりしてないと」という言葉を思い返していた。坪口が教えて強くなったのだろうか。男子選手が千早を「メッチャ好み」と口説き始める。坪口の目論見通り、千早は動揺。千早を揺さぶっていると見せかけて、太一を苛々させるのも作戦のうち。
揺さぶるべきはまつげくん 瑞沢のエースは千早ちゃんだが 精神的支柱はまつげくんだ きみは周りが見えすぎる いいのかい? まつげくん にらむべきはこっちかい?
試合が始まるが、読手のリズムが安定しない。太一がすかさず大江に集中するよう注意。連取されてしまった駒野にも声を飛ばす。ただ、配置にも坪口の影響が見えるのに、太一の対戦相手だけは独特で戸惑う。
相手の狙い札ばかりが連続で出るという、太一の不運を嘆く原田弟子達。原田も腕組み。
まつげくんは…… 自分に足りないのは 運だなんて思ってない 足りないのは実力だと逃げずに思ってる でも―― 「実力がない」という思いを繰り返すと 取り憑かれる 努力を嘲笑う 「才能がない」という思い――
memo
坪口先生率いる朋鳴高校との戦い。千早も太一もいつもは「広史さん」呼びだが、ここでは「坪口さん」。新の場面で「かささぎの」「わたのはら・こ」「わたのはら・や」が登場。読まれた札は「わびぬれば」「みせばやな」「やまがわに」「たかさごの」「あまのはら」。