瑞沢側が持つ札を、大江が確認。この一枚が太一の陣に残るとは。
ゆらのとを わたるふなびと かぢをたえ ゆくへもしらぬ こひのみちかな
由良の門は河口で川と海が出会う潮目。そこで楫を失くしてしまった。行方の分からぬ恋。
千早 起きてくれよ せめて見ててくれよ おれの運命を
太一は千早を見るが、まだ畳に突っ伏したまま。札合わせをしてあるので、勝率は五割。しかし、皆は運命戦で太一の陣が読まれるのを見たことがない……
「ゆ」は一字決まりだが、江村の「たき」は「たま」がまだ読まれていないので一字では取れない。空札だったが、太一は攻めた。西田も攻める姿に、太一は勇気を貰う。また空札が続く。江村は自陣を低く守っているので、抜こうとしても隙が無い。
ほんとにずっと出ないのかな おれのやってることは無駄なのかな 空札はあと6枚 いに なつ わび たま す ふ こんな暗記も無駄なのかな ああでも 神さま お願いだ もう一生 運命戦で 自陣出なくていいから だから 今日 今日だけ いまだけ
千早が起きた。太一は気配で察した。
「ゆらのとを」
読まれた札に、会場が沸く。精根尽き果てた表情の太一に手が伸びて来た。畳の跡を顔につけた千早が、西田も巻き込んで、太一に飛びついて来る。団体戦決勝は3対2で、瑞沢高校の優勝。
富士崎は準優勝。桜沢先生からの訓示に、江室も立ち尽くす。
「1年もB級でノロノロしてるやつ」って線を引いた あの時点で見誤ってた あれは「これから登ってくるやつ」だったんだ
千早は子供の時に新が言った言葉を思い出していた。
日本で一番は 世界で一番
同時に前日電話で言われたことも頭に浮かぶ。
団体戦は興味ない 個人戦で勝つことしか考えない
廊下に出ると、新がいた。
「み…… 見た? 見てた? 私のチーム 日本一だよ クイーンになるより早く 日本一になれたよ みんなとだからだよ チームに興味ないなんて言わないで」
泣いている千早、後ろにいる太一や瑞沢メンバーを前に、新は「うん……」と返すだけだった。
memo
運命戦となってしまった、というより運命戦まで粘ったというべきか。手元に残った「ゆらのとを」の歌に登場する「川」が綾瀬、「海」はわたの原で新を暗示しているところにも運命らしさが。第11巻第63首での深作先生曰く「最終的に勝負の命運をにぎるのは自分じゃない」んだよなあ。太一の思いが切ない。とりあえず、勝って良かった! 空札は「きみがため・?」と「しのぶれど」。
第15巻終了で、紹介されているのはこの話での「由良のとを」。四コマ漫画は、アニメスタジオレポ、勝義書店店長、真琴と理音。