西田の相手は、低い体勢からの取り。背中が強そう。駒野が対戦する山井はおネエキャラなのに、取りが力強い。筑波は相手の変人チックな取り方にドン引き。太一も江村の技に苦戦。
に……二字決まりでも囲み手……!! 速く出て速く止まって…… そんなことがこのレベルでできるのか 身体が強いんだ 体幹が――
富士崎の桜沢先生は、身体を壊すことなく長くかるたを続けて欲しいという思いから、体力作りを重視。ストレッチにランニング、筋トレ。美しくスタイルの良い桜沢の指導の下、部員は皆きつい練習に耐えて来た。
取られてばかりの千早だが、空札が続くうちに気付く。大江が言っていた。
私の大好きな読手の山城さんは 多彩なんです 声が 響きが
大江に教わってから、千早は「ちはやふる」だけが真っ赤に見える。
私もイメージの強い札何枚かは色で見える でも 読みにも色が…… 聴いてる――?
観戦中の若宮の認識でも、山城読手の読みには情報量が多い。
ほかでは負けんと思えても 山城さんが読手の試合では 周防さんはやっかい……
山城読手は、理音が小さな頃から天才だと期待している。しかし、理音は読手の読みが綺麗ではないと、途中で投げやりになってしまう。大会は試合が多く読手が変わるので、理音は優勝したことがない。
千早はふと、観客席の大江に目を向ける。大江は静かに目を閉じている。
千早ちゃん もっと歌を聴いて もっと もっと 歌を
千早も目を閉じ、ふーっと息を吐く。耳を澄ませる。
雨が上がった 日が暮れた 汗のにおい 畳のにおい 札のにおい エアコンの音
百人一首で描かれる風景。
夏 嵐 鳴き声 響き さびしさ 桜 友 黒 会いたい 会いたい気持ち 炎
子供の頃の新が浮かんだ。そして、一枚抑える。
音と色とつながる歌が私にはたくさんはない こんな取り方 危なくて何度もできない でも 先生 流れはこうやって引き寄せるんですよね 先生
千早は果敢に敵陣に攻め込む。が、相手と接触し……
memo
それぞれ相手に苦戦する瑞沢部員達。ここでも千早がかなちゃんに言われ続けていたことが、じわじわ効果を発揮している。読まれたのは「あわれとも」「みよしのの」「うかりける」「みせばやな」「しらつゆに」「おくやまに」「なにわえの」「わたのはら・や」。
第14巻終了。表紙絵はいつもの花のシリーズではなく、茄子、南瓜、トマトといった夏野菜。袖で紹介されているのは、第75首で机くんが運命戦を制した時の「ありま山」。巻末四コマ漫画のネタは、睫毛の長さランキング、アニメ化で騒ぐ千歳、かるた選手権を甲子園に例えると。