千早は、はあああああと息を吐き切る。そこには太一の教えがあった。
千早 おまえは息をするだけで勝てる 息をしろっていったら たいていの人は思いっきり「吸う」けど 大事なのはまず「吐く」こと 思いっきり吐く 全部吐く そしたら
千早は立ち上がり、思いっきり息を吸う。
私にはいってくる 見えてくる
そんな千早に見惚れる対戦相手。星に例えるならベガ、織姫か。ふと我に返り、仲間を確認。
え? 奥の一組以外 3組劣勢!?
西田の相手もまた、頻繁に札を移動させている。何故分からないのだろう。
おれのいる翠北会は 攻めもするけど どっちかというと守りがるた 敵陣がいくらどんどん陣形を変えたって 自陣の25枚 一枚も取らせなければいい そのくらいの気持ちでいくと 敵陣も取れちゃう不思議
大江は坊主の札、女性が詠んだ札をと、独自のチェック。
相手の配置に意図が全然ないんなら 私も柔軟に札の確認を
太一も順調に札を取っている。
そりゃあすげえよ 定位置のないかるたで 大量に札を移動させるスタイル でも身体は肩からしか動いてない 暗記についていけないやつにはそのスピードでよくても おれついていくし
西田に以前言われたことを、太一は実感している。
西田がおれに教えようとしたのは 身体があること 身体と 頭と 心
千早は「暗記そこまでがんばれない団」と開き直る。
焦るな 焦るな こんなに札を移動してくる相手は初めて 焦るな ついていけば ホーーーーーーラ ほぼ全部 一字決まりに!!
相手は残り札を全て手前に寄せるが、千早が素早く札を取って行く。相手は圧倒されている。
音と同時に 音より速く 手が出せない 「閃きを信じて攻める」―― おれの「閃き」は脳を通ってる でも この子は耳から 指へ―― 織姫なんかじゃない この鋭さは オリオン座のベラトリックス 女戦士の星
新はペナルティとして、この日来た目的であった団体戦観戦停止。反省文を書くことで、翌日の個人戦に出場可能となった。
なんでやろ おれは 試合のときしか 二人に会えん運命なんかな
山口美丘に勝利。花野が来て、クイーンがずぶ濡れで来たことを話題に出す。
「福井って書いたTシャツの人かばって 個人戦出してくださいって頭下げてました 戦いたいからって クイーンにもライバルっているんですね」
千早は、新のことだと直感。戦いたい、とはどういう意味だろう。
「余計な話してる場合か 予選勝てたのだって ギリギリなんだぞ」
千早が花野に訊こうとしたのを、太一が遮った。
やめてくれ 「クイーン」と「新」 この言葉で千早が集中を欠く 団体戦に集中してほしいのに やっぱり来てる 新――
決勝トーナメントの話になり、筑波が駒野との交替を申し出る。大江も賛成。しかし、西田は次の試合も駒野抜きでと提案する。
memo
千早の混乱ぶりから苦戦中なイメージを描いていたが、他メンバーは通常営業。肉まんくんの試合運びが格好良い。太一も暗記力勝負にニヤリ。千早も最後には自分のスタイルを活かせてニヤリ。読まれた札は「これやこの」「わすらるる」「おもいわび」「かささぎの」「たちわかれ」「かくとだに」。
第12巻終了。梅の花言葉は「高潔」「忠実」「忍耐」。「しのぶれど」はこの巻に掲載されていないが、表紙の詩暢に合わせたか。巻末四コマ漫画のネタは、漫画に足りないものは。菫や須藤などの意見と、太一への思いやり……