ロビーに居た千早の耳に、新の声が届いた……気がしたが姿は見えない。新のことを気にしている千早を、太一が不機嫌に注意する。強豪チームが多く、新のことなど考えている余裕はないのに。
新は陰で村尾と会っていた。外に出ると、同じ中学だった翔二率いる福井代表の藤岡西チームと出くわした。登録三人だけのうち、一人の到着が遅れているらしい。新は頼み込まれ、替え玉として団体戦に出ることになった。
太一は自分が言っておきながら、観客席を気にしてしまう。そして、千早に注意される。
「太一 よそ見しないで もし新が見にきてたら これが私のチームだよって 強いでしょって 自慢するんだから」
新は眼鏡を外し、マスクを着け、替え玉として参戦中。勝ってはいけないので加減が難しい。
なんかまえにもあったな メガネなしで かるた取ったこと……
勿論、小学生の頃の、太一と千早との思い出のことだ。そして、その時に思った。
チームになってみたくての
翔二は新よりも先にA級になったが、一勝も出来ていない。周りにはそういう人が意外と多い。
不思議やけど 3人やったらけっこう勝てたんや 名人目指さんでも 5人えんくても楽しいかるたができたんや
三人しか出場しておらず一敗も出来ないのに、翔二の負けが決まった。一人残った柾のことを考え、新は眼鏡をかけて本気で取り始める。しかし、運営側にいる栗山先生にあっさり見つかった。
藤岡西の敗退は決まってしまった だけど 対戦相手に誠意を チームメイトにまだやれるっていう気持ちをあげたい 伝えたい なにかをあげられるほど強く
新につられ、柾の流れまで良くなった。翔二は驚く。
違うんだ パワーが これが名人目指してかるたやってるやつなんだ
新は15枚差から逆転勝ち。柾も嬉しい勝利。だが、栗山に早速呼ばれる。
「藤岡西の厳重注意はもちろん 新くん… 明日の個人戦 出場停止かもしれんぞ……」
memo
新が別チームにて替え玉として参戦。新の試合で読まれているのは「こいすちょう」「きりぎりす」「ほととぎす」「たちわかれ」「ゆらのとを」「やまざとは」。栗山先生が終始可愛い。