肩に手を掛けられた新は、相手のことがすぐには分からなかった。
「あっ 詩暢ちゃんか! テレビと全然ちがうでわからんかった 激太りしたり激やせしたりなにやってるんや?」
子供の頃の対戦で、新に負けた若宮。
「……おかげさまで4年は無敗や でも まだまだ未熟者やから かるたをお休みしとったあんたにも またコロッと負けるかもしれんけどなぁ」
京女のいけず。つまり「かるたサボってたおまえなんかに二度と負けるかバーーーカ!!」と言っているのだ。若宮は参拝後に琵琶湖の鳥人間コンテストを観に行く予定。
「団体戦? あんなんはかるたを好きやない人がやることや だから新も出んのやろ」
瑞沢チームは千葉情報国際高校の片仮名名の対戦相手に怯みながらも、西田の声掛けに落ち着き始める。
「みんな ふつうにやろう ただのかるた好きだ」
対戦しながら考える。
自分たちが どれだけ”競技かるた”に染まってたかわかる セオリーどおりじゃない配置も 好きな歌をひいきするのも 取りたいように取るへんてこなフォームも みんなまとめて百人一首だ
瑞沢は乱れぬフォームできっちり札を取って行く。
私たちの ふつうは こうなの 毎日毎日 みんなで積み上げたのは
試合は瑞沢の勝利。試合後、ホワイトボードを占拠し、相手へのメッセージを英語で書き付ける千早、と英語監修の太一。
「かるたは楽しいけど…… 競技かるたはかっこよかった 強いチームに本物の競技かるたを見せてもらった 学校にかるた好きを増やして 強くなって また来年来れるようがんばります」
新もその様子を見ていた。
memo
一回戦の千葉情報国際戦。読まれた札は「ゆうされば」「うかりける」「せをはやみ」「たれをかも」「いにしえの」「やえむぐら」。小学生の頃から戦っている新と詩暢は仲良さそうだ。