太一は新と対戦することになった。
目が合わせられない 気負ったらダメだと思うのに 新はこっちを見てるよ 普通にしてるよ
くそっ、と情けない自分に太一は苛々。村尾が新に座る位置を間違えていると指摘。無言のまま場所を交換し、二人同時に「ふー」と息を吐く。太一が顔を上げると、目を逸らし赤面している新。札を並べ、新の配列が以前研究した通りであることに気付く。
口元を締め、正面を見る。ふっ、と笑いが漏れた。目が合った新に言葉を掛ける。観戦に訪れた周防は、二人の表情から友達同士だと推察。新は「えっ」と面食らっていたが、すぐに小学生の二人がアパートで対戦する姿を思い浮かべる。
かるた しよっさ
そして戦いは始まった。最初から鋭い取りで、二人とも札を拾いに行く。新がセイムだと主張し、太一が折れる形となった。周防は太一に関心を寄せる。
ふうん… フワッと敵陣右下段へ攻めて 敵陣左へ方向転換 それをセイムのタイミングだったと認めさせた まあ「嫌な相手」と思うよね さすが白波会の選手
太一は正面を鋭く見据える。
これが 原田先生の攻めがるた 一枚だって 簡単に取らせない 新にとって いやなかるたを取るんだ 格下と思ってる人間に 粘られて 焦るとこまで
新は嬉しそうな表情。目が合うと、頬を赤らめ顔を背けられた。太一が一字決まりの「め」を素早く払い、取りに立つ。新の落ち着いた様子を見て、危機感を覚える。千早が評していた通り、水が流れているような……
新は配置を見て、札の取り方をイメージ。
もっと難しいと思ってた 太一と戦うのは 心臓がフワッと大きくなるような 嬉しい
太一が新に訊く。
「新 おまえ 秋に 千早になんか言った?」
新は顔を上げ、札に視線を落としている太一を見た。顔が紅潮する。
「う!? うん 言っつんた」
太一から送り札で「ちは」が差し出される。
私は攻めがるただから 手に入れたいものほど手放すの かならず取ると勝負に出るの
互いに真っ直ぐ前を見る二人――
東京の大会、B級優勝は田丸妹。A級は千早が須藤に勝って優勝。
新幹線車内で、生八つ橋を貪る周防。後ろの席に「食べる?」と差し出すが、太一は眠っている。目頭には涙。高松宮杯の優勝は村尾、準優勝が新、4位入賞で太一。
memo
高松宮杯、太一と新の対戦。第23巻第120首での千早の様子から、新と何かあったと勘付いていた太一が、ついに新に訊く。但し、新がどんな台詞を言ったのか、千早がどう返事したのかまでは知らない様子。物理的距離もあって進展が無さそうなのは感じているだろうけれど、千早が何も返事していないとまで想定出来ているかな。そして、名人周防。以前はお椀にお汁粉をちょっとしかくれなかったのに、和菓子を差し出すとか、興味はどうやら新より太一らしい。
ヒョロは名前にも入っているのに「ひ」が苦手で、最後の「ひともをし」を取られた模様。千早が勝利を決めた札は「みちのくの」。
千早も太一も高校二年次の公式戦が終了。まずは千早の戦歴のみを纏めておく。
全国大会予選
- 秀龍館 25枚差パーフェクト
- 冨原西 25枚差パーフェクト
- 東宮 ※勝敗不明だがパーフェクト勝利?
- 準決勝 朋鳴 武井
- 決勝 北央 甘糟那由太 ●運命戦で敗戦
全国大会団体戦
- 千葉情報国際 アンソニー・ソーブ
- 山口美丘 中山学
- 準々決勝 京都・翔耀 ※恐らく勝利
- 準決勝 兵庫・明石第一女子 逢坂恵夢 ●敗戦
- 決勝 静岡・富士崎 山城理音
全国大会個人戦A級
- 一回戦 兵庫・明石女子 夕部慶子 2枚差
- 二回戦 秋田 金子 7枚差
- 三回戦 京都・津咲 若宮詩暢 ●23枚差で敗戦
吉野会大会A級
- 一回戦 山井真琴 7枚差
- 二回戦 海野 4枚差
- 三回戦 林 8枚差
- 四回戦 武村敬一 4枚差
- 準々決勝 猪熊遥 2枚差
- 準決勝 坪口広史 不戦勝
- 決勝 真島太一 優勝
文京新春かるた大会A級
- 埼玉咲良会 田丸兄
- (この間試合数など不明)
- 決勝 須藤暁人 優勝