休憩時間。原田先生の控室は、応援に来た人でいっぱい。原田本人は寝て疲労回復中。周防の控室も、大学かるた会関係者で賑やか。周防の電話は、動画配信されている名人戦の見方を説明するためだった。猪熊は控室で授乳しながら、理音に言う。
「理音ちゃん 見ててね よく見ててね たぶんこれが私の 最後のクイーン戦だから」
若宮の控室には、若宮と母だけ。かるた向きではない重い生地だが、祖母が用意してくれた着物。しかし母は、その豪華な着物は政治家である祖母の票に繋がるからだと言う。
「なんや その顔 ただの応援でそないに豪華な着物 孫に買うわけあらへんわ あの人は政治家で あんたはきれいな看板や」
千早が差し入れを持って訪れ、暗い気持ちから一転嬉しそうに喋る若宮。自分ではなく原田の応援か突っ込みを入れ、若宮はライバルだからと千早に返される。若宮は千早相手にいつもの「いけず」が出ず、素直な話しぶり。
「東日本予選も突破できんとライバルとは大ウケやわ」
千早は少し残念そうに答える。
「東日本予選の日 修学旅行かぶっちゃって……」
若宮の表情が冷めたものになり、差し入れのスノー丸どらやきを握り潰す。そのまま試合会場に行ってしまった。
若宮は戦いながら、祖母のことを考える。A級になり報告した時も、言葉に温かさがなかった。綺麗な看板が強くないと困ると言われたろころで、失望も無い。修学旅行と聞いても……
クイーン戦は猪熊が優勢。夫と子二人が見守っている。腹部を抑える。
えらそうだけど 奇跡を起こしたいの 一生かるたを好きでいる 女の人のために 3人子供がいても 女王になれるって
千早の言葉に、若宮は「修学旅行?」と反応した。「また一緒にかるたしようね、クイーン戦で!」と千早自身が言ったのに。
私は 約束を破ったんだ
若宮は苦しい展開。昔、伊勢先生に「一人になるほど強くなる子や」と言われたが。
伊勢先生 うそつきやな 一人になるほど強いんやったら うちはいま 最強やないんか
若宮はまさかの初黒星。
memo
控室訪問と、二戦目の開始から終了まで。次週がセンター試験、女性選手の未来像、詩暢が負けるケース、など今後へのヒントが散りばめられている。登場した札は聞き分けの描写で、相手の心変わりを悩む歌の「ながからん」のみ。