番組に出ていた太一を見て、新に村尾が声を掛けた。
「おれ ずっと考えてたんやけど おまえがおれ以外で ここしばらくで負けた相手のこと そう 全員白波会の選手や 周防名人のことよりまえに 考えんとあかんのでないか? 白波会的なかるたが弱点かもしれんって――」
千早は学校の教室で、先生の勧め通り、音源を流しつつ音読するという方法で英語の勉強。
リスニングは発音できることが大事 音源をよく真似することで 聴く力が上がっていく
何故か同時に屈伸運動もしているのは、身体を動かしながら覚えるという、かるたで鍛えた暗記力。但し、かるたで鍛えた忘却力で、勉強したことをすぐに忘れてしまう……
窓から見える図書室では西田、パソコンルームで駒野と大江が勉強中。彼等は部活を引退した。千早は小学生の時、新に言われたことを思い出す。
ずっと一緒にかるたはできん
勉強面でも追い詰められつつ、それでも前に進むと決めた千早は、東大かるた会を訪問。専任読手七人の読みのデータを、周防に分けて貰いに来たのだ。しかし、周防は不在で、須藤が部員三人を勝ち抜き出来たら口添えしてやると言い出す。
予備校帰りの太一は、周防とアイスの買い食い。太一は周防と同じ歩幅を保ち、同じ角度でアイスの棒を持つ。同化を心掛けている。周防は食器が触れ合う音や繁華街は避けていると言い、太一に耳栓を勧めたのだった。
音に繊細な人の感覚が 自分のものになるような
千早母に「いつか感じなくなる」と咄嗟に言ったのは、周防の言葉があったから。
この強さは期間限定だよ
東大かるた会の練習場に着くと、千早が須藤と試合をしていた。太一は中に入らず帰って行く。
ダメだ せっかく周防さんに近づこうとしてるのに 千早に会うとダメだ 見ても 声聞いてもダメだ 自分になっちゃうからダメだ
千早は須藤とが三試合目。良い勝負をしている。
こめかみの血管がピクピクする こんな緊張感…… そうそうない 楽しい 楽しい
しかし、事情を知った周防が、試合を止めに入った。周防は千早に冷たく言い放つ。
「君も帰って 読手さんのデータはなにしてもあげないよ 一生懸命お願いすれば たいていのことは叶ってきた? 甘いよね」
千早は頭を下げ、練習場を後にする。須藤は控室に下がり、ゴミ箱を蹴る。
電車に乗った千早は溜息。小学生の時に思ったことが、また頭の中に蘇る。
一人になるんなら かるたなんて楽しくない
もう違うよ、と自ら何度も否定するが。と、そこに須藤から電話が掛かって来る。
「おれ 持ってるぜ 読手さんの音源 いるならやろうぜ 今日の続き クイーンになりたいんだろ? おれもなりたいんだ 名人に 周防さんを倒したいんだ」
薄闇の駅のホームでそれを聞く千早の視界には富士山。
百人一首に 黒い富士を詠んだ歌は あったかな
memo
周防に音源を分けて貰いに来た千早。そんな図々しい願いは断られたものの、須藤の協力を得られそう。彼が絡んで来るとは、全く想像していなかったよ。
太一の「ダメだ」連呼は、第27巻第142首で千早が図書室に入って来た太一を見て連呼していたのとシンクロ。でも、先日千早が一人で部室に居た時、自分から乗り込んで行ったのに何を今更?
千早の「一人」はトラウマになっているようだ。そんな中でも「楽しい」ことを見い出そうとしたのに、周防名人に思考を停止させられた。ところで、周防さんは太一から千早とのことを聞いているのかな。何となく想像つくだろうけど。
新のかるたについては、第7巻第37首で広史さんが「周防名人はものともしない」、第20巻第107首で周防が「テンション上がらない」とも言っている。第22巻第114首で原田先生が新のかるたを研究したものの新しい面を見せられたらどうするのか、と広史さんが心配していたのと同じ状況になりそうなので、自身の弱点改善に繋げるだけなら良いが、白波会対策として考えると危険では。