札を一枚取れて嬉しい千早。千早に先取され、闘争心を燃やす新。
取られた まえやったときもそうや 気を抜いてたわけじゃないのに 「一字決まり」では千早に負ける!?
新の活躍により、ヒョロチームに大差で勝利。ここで新が小学校一年から五年生までの学年別で毎年全国優勝している実力者で、綿谷始永世名人の孫であることが判明。原田先生はガッツポーズ! 昔からの願いがあった。
うちからいつか名人を――
歌を覚え切れていない千早に、「ちはやふる」のように自分と関わりの深い歌は誰より早く取れるようになる、と原田はアドバイス。
「百人一首は全部で百首 百人友達ができたと思って 仲よくなりなさい」
太一は塾に通っているので、毎回ではないが出来るだけ来る、と答える。脳裏に浮かぶのは、新の「太一、ナイス」。
やりたいことを見付けた千早。やっと友達も出来て、大好きなかるたの会に入った新。三月に行われる小学生大会に、意外なことに太一までやる気を見せている。源平戦とは違って総当たり戦のため、三人のうち二人は勝たなくてはならない。三人は仲良く特訓まで始める。
練習後の帰り道。雪合戦をしながら、千早が「綿谷くんはさー」と話し掛ける。
「新 新や」
新の言葉を聞き、太一も苗字ではなく名前で呼ぶことにした。千早は無邪気に雪が積もる地面をごろごろ。
「あはっ 新 太一 ずっと一緒にかるたしよーね」
二人は千早の手を片方ずつ引き、身体を起こしてあげる。ただ、彼等の表情が無いことに、千早は気付かない。三人が戯れている様子を原田先生も微笑ましく見守っていたが、懸念している。
「ずっと仲よしでいてくれたらなー 子供はさ どんなに強くても かるたが好きでも 友達がいないと続けられないんだ」
千早がやっと百枚の札を覚え、太一に声を掛けようとしたのと同時に、彼の周辺がわっと沸く。太一が難関中学合格を報告したのだ。通学に一時間半もかかるため、かるたを続けるのは難しい。そして、新も祖父が倒れたため、卒業と共に福井に帰ることが決まっていたと告げる。
memo
単行本第3巻から載るようになった人物紹介の太一欄には、「かるたを通じて千早と仲良くなった新への対抗意識からかるたを始める」とある。そこから更に白波会に入る切っ掛けが「太一ナイス」ということか。
千早が原田先生から札セットを受け取り「友達」で思い浮かべている札は、「しのぶれど」「やえむぐら」「みちのくの」「みよしのの」「やまがわに」「こころにも」。自宅に持ち帰り、覚えるため読み上げているのは「みよしのの」「こぬひとを」「こころあてに」。ここまでは初心者千早なので何の意図も無さそうだが、新が雪合戦しながら出題したのが「よのなかは」「ありあけの」「きみがため・お」「いにしえの」で、仄かな恋心が反映されているような札選び。
千早が百首覚えたことを、まず太一に報告しようとしたのは何故だろう。席の位置関係からも新の方が近かったようだし、かるたの「師匠」的な新に行くのが自然な気がするのに。太一は今後かるたを続けられない、新も実は駄目、という流れで話を進めるためで、これも特に意味は無いのか。