千早は、太一と新の三人でかるた会の見学に行く。責任者の原田先生は、三人を抱き締めて大歓迎。会への勧誘が上手く行っていないのに、一度に三人も来たのだ。
会には隣小に通う木梨浩=ヒョロ達がいた。しかし、百人一首を全部覚えてすらいないのかと馬鹿にされる。そこで新がヒョロに、3対3の源平戦での勝負を持ち掛ける。自信のある新に、ルールも分からないのに根拠のない自信を見せる千早、素人がやっても負けるだけだからと消極的な太一。
50枚ずつの札を並べるチーム戦。自陣も敵陣も、百枚全部を覚えなくてはならない。新は場を仕切り、千早と太一にも役割を与える。反射神経の良い千早には、「む」や「す」など最初の一文字が一枚ずつしかない一字決まりの札を。太一には少し難しい六字決まりの札を。太一は足手まといになるから新が一人でやれば良いと面倒臭がるが、新が思いを告げる。
「チームになってみたくての……」
と言いつつ、千早と太一の担当分もどんどん取って行く新。自分の役割を取られ、新に対してヒートアップする千早。対戦相手のヒョロそっちのけ。太一も萎縮気味。
なんで―― なんでこんな実力差があって 悔しがれるんだ 千早 こんなのがんばることないのに 綿谷だって チームだなんつっても おれらに期待なんてしてないのに 期待なんて――
勝てるものだけ勝負しなさい、とは太一母の言葉だ。太一はそれを振り切るように、一枚の札を取った。新が太一のことを苗字ではなく、初めて名前で呼び掛ける。
「太一 ナイス」
千早も札を取ろうと、耳を澄ませる。一枚の札を、誰よりも早く正確に払った。新の耳に「ふ」が聞こえる前に、札が跳ねる音がした。読まれたのは「ふくからに」。原田も皆も、千早の反応の良さに驚く。千早は飛ばした札を嬉しそうに拾う。
あたしの一枚目だ
memo
初めて訪れた白波かるた会。原田先生やヒョロとの出会い、先生の「メガネくん」「まつげくん」呼び、千早得意札となる「ふくからに」など、原点盛りだくさん。