千早と太一、結果を出すのはどちらか。原田先生は腕組み。
世の中には結果より努力が大事って考え方もあるが 指導者にも生徒にもそれは本当は苦しいんだ 「がんばった」も「きつかった」も風のように流れていってしまう 「結果」は石なんだ 「がんばった」を留めておいてくれる石 そして「結果」は集めるんだ――
観衆は二人の経歴を噂し、次にも期待する。二人が手を振った先に、飛んで行く札。
強い 追い風を みんなに 押してもらって ここまで来たね
終戦。千早が顔を上げ、握り拳を作る。優勝は千早というアナウンスに、沸く観衆。千早はふっと倒れ込む。太一は俯き、拳を震わせ、正座したまま動かない。
椅子に座っている千早は、無表情で下向き加減。周囲は東日本予選で活躍しそうな選手の名前を上げ、盛り上がっている。千早の名前も聞こえて来るが、千早は修学旅行がある。宮内先生が公欠を取る案があることを話す。千早はちょうど現れた母に「修学旅行に行きたい」と泣きながら訴える。
「私 高校の先生になりたいの~~ 修学旅行行ったことないじゃ困るのおお~~ クイーンにだってなりたいけど 宮内先生とか桜沢先生みたいな 顧問の先生になりたいのぉぉ~~ で でも 今日はこの袴の初めての試合…… 勝ちたかったの~~ 勝ったよぉ~~ 太一とがんばったよ~~」
大号泣する千早。
やれたよ やれたよ 思いっきりやれたよ 楽しかったよ
その頃、洗面所に居合わせた太一と新。階段を降りながら、新が後方から話す。
「…… 太一 笑うかもしれんけど おれ なんとなく 千早はずっと 太一のもんやと思っとった ガキのころからそばにおるのは太一やったから」
太一は心の内だけで考える。太一は千早の近くにいるが、二人とも大差ないと。
「千早はべつに だれのでもないよな」
新の言葉に、太一が振り返る。対峙する二人……
修学旅行一日目。太一は熱を出して欠席とのこと。慌てて電話を掛けようとする千早だが――
memo
千早対太一の戦いが決着。最後の札を取る場面は、前話の最後のコマと同じだね。つまり、試合結果は前話で呈示済み。札は「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む」で、恋しい人を求めながら独り寝するのかと嘆く歌。そしてまた、新が黒さをさりげに覗かせている。新も敗者の一人ではあるが、あの場面であんな追い打ちはきついわぁ~