第104首 ずっと一緒にがんばってきてくれた男の子だ

ちはやふる ちはやふる_高2 漫画
漫画「ちはやふる」の伏線や感想などの超個人的備忘録。あらすじの記述あり。ネタばれあり注意。

多くのギャラリーが息を詰めて見ている。

なんだ この試合は 高校生の…… しかも同会選手の試合なんか どこか緊張感のない空気になるのに これは…… 高校選手権A級決勝の あの二人(新と若宮)のような 沸き上がり 絞り出すような 本気

上段に並ぶ札を太一に突き手で取られ、千早は取り難く慎重になっている。太一は疲れ切っている筈の七試合目でも、まだミスをしていない。原田先生も感心。

まつげくん あえてガラリと配置を変えることで 自分に対してもプレッシャーを 危機感と緊張感を

千早にミスが出て、太一が狙わせるために置いてあった「ち」の最後の札を千早に送って来た。攻めがるたが信条なのに守らされ、息苦しい。桜沢先生の教えを思い出し、上半身を張り姿勢を整える。太一と目が合った。

「あれっ 太一だ」
「えっ?」

太一は「? そーだよ?」と、素で千早の言っている意味が分からないといった顔。

太一が狙っていた「ち」の札を取るが、千早の指とぶつかった。「大丈夫か」と心配する太一に、千早は全く気になっていなかったので「平気」と答えるが、見れば太一の方が手刀の部分に切り傷を負っている。

…… 太一だ 知らない人みたいなかるたを取るのに 太一だ 太一なのに 知らない人みたいだ でも 太一だ

一年の春、部室に畳を運び入れた時を回想する。

ずっと一緒に がんばってきてくれた男の子だ

かるたを見詰める太一に、敵陣か自陣かと、千早は考える。厳しく払い、札を拾いに立ち上がる。

太一だ 怖くはない でも負けたくない 敵陣も自陣もない いくよ 太一

千早の強い眼差しに、太一もきつく見返す。

バカ 千早 策はある 速さ勝負には乗らねぇよ

花野は頬を紅潮させ、涙を零しながら見ている。

綾瀬先輩が真島先輩を見てる 見てる 見てるんだ 恋じゃなくても 愛じゃなくても あの瞳が 真島先輩がつかみたかったもの

大江は去年D級決勝で駒野と戦った時のことを、駒野に語る。

「いまでも あの試合が私のベストゲームです 千早ちゃんも真島部長も 今日のこの試合が一番強い二人だと思いませんか」

新はかつて祖父に「かるたが一番楽しかったのはいつや」と訊かれた。浮かぶのは、小学生の自分が千早とアパートで対戦した場面。読手は太一だ。目の前では、太一が千早と試合をしている。小学生の時の記憶が、太一と千早の対戦、読手をしているのが新、というものに摩り替わる。

なんやろう なんで おれ 負けた? なんで なんで 千早と 戦ってんのが おれや ない?

ちはやふる
ちはやふる

memo

吉野会大会決勝、千早対太一戦。緊迫感のある試合を息を呑んで見守る観衆と、千早と対戦する太一に嫉妬する新。主要キャラ同士の対戦という条件に、観衆の言葉通りでもあるが、この後に描かれる試合も含めて一番面白いと思える一戦だ。「あれっ、太一だ」など、ちょこちょこ会話が挟まれるのも楽しい。読まれたのは「あけぬれば」「なにしおわば」「あいみての」「ちぎりおきし」「あさぼらけ・う」。

posted on December 4, 2015
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