千早の次の対戦相手は坪口。同会同士の対戦を避け、試合後ずっと眠りこけている千早の知らぬまま、坪口は棄権。準決勝は太一と村尾の一試合だけとなった。坪口が太一に言う。
「きついか? でも ここだぞ まつげくん ここにいるたいていの人たちは まつげくんを勢いだけで上がってきた若僧だと思ってる でも うちの会のやつらは知ってる きみは勢いも運もたいしてない 実力だ ここで実力にしてこい」
と言われても、相手は新の兄弟子、村尾。強いに決まっている。
広史さん そんな怖いこと言わないでくれ 「実力」なんて ないことがわかったら
新と村尾が太一を見る。太一は思い出す――昔、新の眼鏡をとって、それを返した時のことを。
新が 見てる
原田先生が坪口に、太一と当たっていても譲ったか、と問う。
「そうですね まあ 潰しにいったかも 綿谷くんのときと同じくらい 意地になって」
新は太一の試合を観戦するのが初めて。
いちばん意外や かるた続けて A級にまでなって
小学生の時、かるたばっかりやるような暇人じゃない、と言っていたのに。
太一と村尾の試合は、五枚差で太一優勢。村尾は攻めが身上。白波会の太一も攻めがるた。
でも なんだこの呼吸 微妙な出遅れが 絶妙な守りに……
太一は試しながら取る。
できてる 身体全体で踏み込んで 腕だけ急反転する戻り手
相手は手が出せない。太一はのびのびと取っている。
千早はいない 新は見てる
新の顔が強張る。村尾が負けるわけがない。小学生の時に三人で源平戦で戦った記憶でも、負けるわけがない。
原田は目を見張る。
まつげくんが伸びる道は 本当は 守りがるただったのか
太一が勝利。千早との決勝戦となる。
memo
準決勝にまで勝ち上がって来た太一。先の試合で北央のアホなぐるぐるピン君と当たったのはラッキーと思っていた太一だが、広史さん否定w そして戦った村尾戦に勝利。ただ、千早が場に居なかったことが勝因の一部でもある模様。