「ちはやぶる」で千早が払った札が、猪熊の札とぶつかった。同じスピードで取ったのだ。元クイーンの猪熊は、桜沢先生の五つ下のライバルだった。桜沢はクイーン戦で四回も挑戦したのに勝てず、どうやったら強くなれるのかを訊いた。
えー 聴こえるから取ってるだけだよー 桜沢さんも 聴こえたら取ればいいんだよ――
太一は北央の城山と対戦。流れが悪い。
身体の動きが重いやつと思いきや 手が遅いからブレーキの必要がないんだ まずい…… ジャストで取られてる
煮詰まっている太一に、原田先生と坪口がわざとぶつかって来る。須藤のことを考えながら戦っている城山は思う。
あんたのきもちがわかるよ 先輩がいるっていいな
太一は呼吸を整え、連取して行く。
基本遅いんだろ? 囲み手でもブロックでもすればいいんだ おれ 完璧な取りじゃなくていい 身体が軽くなる
理音は「強豪富士崎」を守ろうと頑張るが、須藤にあえなく敗戦。悔しがる。
新は山本由美に七枚差で勝利したが、モメユミ相手に得も言われぬ疲労感。山本は再来週のクイーン戦予選に標準を合わせているので、負けを問題視していない。
残る対戦は、千早と武村組。武村は名人戦で大差で負けてから、半年かるたが取れなかった。
半年…… 半年もおれはなにを 半年でこんな若手が現れるのに
勝利したのは千早。
ベスト8が出揃い、白波会は千早、太一、原田先生、坪口の四人、南雲会が新と村尾で二人残った。桜沢は宮内先生に話の続きをする。
「運や時代も関係するので 綾瀬さんが…… クイーンになれるかはわかりませんが かならず倒さなければならない相手がいます」
千早の次の対戦相手は、猪熊と決まった。
memo
吉野会大会も進むにつれ見知った面子ばかりとなり、誰が誰にどう勝つんだろう、とハラハラドキドキな展開だ。読み札は「わたのはら・こ」「せをはやみ」「あしびきの」「わすらるる」「ちはやぶる」「みかきもり」「たちわかれ」「さびしさに」が登場。
第18巻終了。葡萄にも花言葉があり、「陶酔」「酔いと狂気」「親切」「慈善」「人間愛」など、後半は先生に合っていそうな系統。袖で紹介されている「あきかぜに」は、この巻では登場しない。作中の季節に合わせたのか。巻末四コマ漫画は、先生表紙巻と菫、自分を描けと騒ぐ北央部員や先生と千歳、小説中学生編と太一。