千早は二回戦も勝ったが、西田の目には千早の右手は本調子ではなく、勢いと振りの強さがないように見える。
太一が一人でいるところに、新が来た。口ずさんでいたのが校歌ということで赤面する太一だが、新には何ということはないらしい。二人で暗記を忘れる方法、試合中に暗記する方法などの話をする。
あ へんな感じ 新と話したいことがたくさんある かるたを通したらたくさん――…
新が太一に、かるた部を作るのは難しかったかと訊く。新が団体戦をも見据えていると知り、太一は嫌な気持ち。瑞沢かるた部創設に関しては千早の強引さが全て、と千早の名前を出したところで話を打ち切る。
「新は名人戦だけ見てると思ってた 余裕あんだな」
太一はそのまま立ち去り、壁に拳を叩き付ける。
なんだおれ なんだおれ なんだおれ 気負ったらダメなんだ 自分に負けて何度も繰り返した無様な試合 でもダメだ 新と当たって 気負わずにいる自信がねえ 「団体戦は個人戦」って言ったって おれは自分のことで精いっぱいだ
宮内先生が会場に到着。桜沢先生に合宿のことで礼を言い、質問する。
「あの 綾瀬は クイーンになれる子でしょうか……!?」
成績も下の上、得意科目は体育という千早。かるたにはプロがないので、将来が心配なのだ。
「私はどんなふうに あの子を助けてあげればいいのか クイーンになる夢も 将来の夢も つかんでこいって言ってやりたい……」
千早は進路希望調査票に、かるた部顧問になりたいから高校の先生になりたい、と書いていた。
四回戦、千早は準名人の武村との対戦。西田は見続けているうちに気付く。得意札でも勢いのない取りだが、右手を休ませていたお陰で、無駄な力が入らなくなったのだ。千早は自らの右手を翳す。
詩暢ちゃん この先にあるんでしょ? 「音のしないかるた」の正体――
memo
吉野会大会は男女混合で一般参加なので、より一層強敵揃い。とはいえ今回は新キャラの猪熊、太一と新の会話、千早の進路調査表の話など、試合以外のネタが印象的。読まれたのは「わびぬれば」「やまがわに」「ながらえば」「ふくからに」。