夏休み明け、新は高校の集会で個人戦A級優勝者として紹介された際、壇上でマイクを借りてかるたへの参加を呼び掛ける。返って来たのは、A級だが教師の管野、家族がやりたがっているという話ばかり。
高校のチームは難しくても かるたに風を集めることはできる ここは福井なんや――
千早は進路志望調査表を埋められずにいる。でも、楽しい修学旅行も控えているし、かるたの季節でもある。
大江は納得行かない。富士崎合宿に二人で参加したというのに、太一と千早は仲が進展するどころか、熱い試合っぷりでライバル関係が強化されたとしか思えない。変わったのは太一の方だ。千早も同じように感じていた。
太一が変わってきた もともと正確だった暗記が 後半の鋭さにつながってきた
勝つ、勝てる、どのくらい差をつけるか、千早の一字決まりを狙うか、目標とテーマを持って取り組んでいるのが分かる。千早が太一に左手で勝つのがもう厳しくなって来た。
負けて悔しがる千早は、太一にもう一戦要求。名人戦予選が近いので、西田が対戦したがる。駒野もB級なりたてだが、A級になって権利を得ているかもしれないので食い下がる。大江もはっとする。
全国大会の個人戦で優勝 一回も負けないで一日を終えるって 変えるんだ 人を――
ところが、名人・クイーン戦予選と修学旅行の日程が重なっていることが判明。大江はいつものように畳の傍に転がる靴を片付けながら、千早に忠告。他人の靴を揃えることは「幸運」を一つ拾うこと、白い壁には手をつかない、畳の縁は踏まない、といった母の教えを守り、大江は幸運を拾い続けて「ラッキー貯金」を積み重ねてるという。
「迷ったら 自分の中に積もっていってほしいのはどっちか―― そうやって選んでもいいんじゃないですか……?」
深作先生の授業で、夏休みの宿題だった短歌の秀歌二十選のプリントが配られる。千早が作った歌も含め、それぞれの歌に皆から笑いが起こる。そんな生徒達に、深作が恩師の口癖だったという言葉を贈る。
「生みの苦しみを知りなさい 知ったうえで 覚悟を持って人を許しなさい 短歌でも文学でもなんでもです」
深作は更に続ける。
「私の中には たくさんの先人の言葉が 受け取って来た宝物があるので それをきみらにパスするために 受け売りをするために 教師になったんですよ」
memo
夏休みが明け。先生に纏わる話の巻。管野先生は賑やかしかと思いきや、第27巻以降に良い役どころで再登場。登場した札は「みかのはら」のみ。