太一は、周防に駅までの七分間で話を聞いた。
かるたは4通りしかないだろう? 自分が取る 相手が取る 自分がミスをする 相手がミスをする
攻めがるたの原田は「自分が取る」で、千早も新も、たいていの選手がそうである。周防は太一がお手つき――ミスをしなかったことが不満だったらしい。太一は周防を見て思うのだった。
相手にミスをさせる そのことだけを考えるスタイルを 魅力的だと思う自分がいるんだ
クリスマスイブ、部員は筑波家に集合。弟達へのプレゼント作戦は大成功。駒野は千早に話す。
「去年のクリスマスは みんな別々のクラス会だったじゃん あれも楽しかったけど…… 友達少なかったから余計に思うけど 僕には みんなで過ごせるの 夢みたいだ」
千早は、去年駒野が言ったことを思い出しながら、皆の輪に新が加わっている姿を想像する。
ここにいたらいいのにって思う人は 家族なんだって つきあいの長さも深さも関係なく
若宮はクリスマスも一人で練習。より寂しくなるからケーキは出すな、と母が使用人に話しているのが聞こえる。母とは家族という感じがしない。札を見ながら、詠まれた人物に想いを馳せる。
かるたの札のほうが 家族みたいや かるたの札 だけや
帰宅した祖母に質問され、札を最短距離で取る練習をしていると答える。祖母はマジックを取り出し、畳に惜しげもなく線を描いた。唖然とする若宮、母と使用人。
1月10日、近江神宮。千早は部の仲間達と共に、名人戦・クイーン戦の観戦へ。
memo
周防が言う4通りのかるたのことを考える太一の背景に描かれた札は「たまのおよ」「なつのよは」「さびしさに」「ひともをし」「わがそでは」「わすれじの」と切なげな歌ばかり。筑波宅のクリスマスで新を想う千早を描写しているが、新がいるコマ全てに太一も描かれているという徹底ぶり。
第23巻終了。椿の花言葉は「控えめな優しさ」「誇り」。袖の歌は第120首でかなちゃんが詠んだ「逢ひみての」。帯広告は「勝敗は、指先のみぞ知る。」とある。巻末四コマ漫画は、体育祭リレー本番。最終走者かなちゃんから机くんに急遽変わるが……
第26巻発刊後に改めて気付いたことに、巻表紙と一首、そして内容とは概ね連動している。この巻では新告白というビッグイベントがあったのに、表紙が新ではない。うっかりではなく、意図的に避けたか。