千早は周防を前に、世界が歪むような感覚。
偶然だと思ってた 枚数差を調整して狙うってことは 取れるのに取らない札があるってことだ 相手のミスも数字のために誘うってことだ そんな選手がいるなんて そんな人が名人だなんて
須藤は千早の様子を伺う。
綾瀬みたいなバカまっすぐタイプは呑まれて終わりだ そうそう自分のペースに持っていけねえ だから名人なんだ
と、人のことより。須藤は太一と対戦中。
こいつ…… こんなかるただったか? 器用にいろいろこなすやつだったが まさしく器用貧乏だったのに 落ち着いてきてる……
太一の関心は、須藤に小石川、周防名人までいる練習環境。そこでふと千早に目を移したところ、27対13という大差で負けている。お手つきが多くないとならない数字。太一は周防の横顔を見る。
そういう 魔法……
千早は、名人戦で周防と対戦した武村の様子を思い出し、一旦立ち上がった。
周防さんになりきろうとしたとき なにを感じてた? 小さな声は相手に近くに寄ってもらうため 小さな音と生きるため 正確な位置の把握 押さえ手…… 耳だけの人間になるため
途中ラッキーな取りに違和感を覚えながらも挑み続けるが、14枚差負け。周防が急に大きな声で「ははっ」と笑った。一転、いつもの小さな声で千早に言う。
「君 おもしろいね かわいくて 前向きでへこたれなくて 友達も彼氏もいて クイーンにもなりたいの? なれないよ」
周防が立ち去る。その腕を太一が掴み、羊羹を差し出して次の対戦を申し込む。出世を予感させる男……!
太一は周防に、千早に言った理由を問う。周防は口を歪めて答えた。
「まっすぐな子って 曲げたくなる」
目の色を変えて怒る太一。
「試合で曲がらなかったやつを 言葉で曲げないでくれ」
太一は周防に負けて終わったが、部の女性が状況を見ていた。
0-14で 周防さんの勝ち これは狙った数字 でも あの子 お手つきは一度もしなかった そんなのいつ以来? 周防さんがきっちり25枚取らされた
太一は千早と帰り道で別れ、周防に感想戦を頼みに行き、「彼女と帰れ」と断られ、頭を下げる。
「…… ほんとは彼女じゃないんです 虚勢はりました すみません」
周防は太一の肩をがしっと掴んだ。出世する……!
千早は原田先生の自宅に立ち寄った。
「原田先生 私―― わかった気がするんです 周防さんの 弱点」
memo
周防との練習試合に挑む千早。太一も須藤と対戦しているのに、周防の動きに気付く余裕なんて生まれるのか? 周防が千早に「クイーンになれない」と言った理由は、単なる意地悪? 読まれた札は「こぬひとを」「ゆうされば」。何より、繰り返される「出世する」にワロタwww