敵側の新に千早が何やら話していたのを「新に勝って欲しいのか」と太一が咎めるが、千早は不思議そうな顔。
「ちがうよ でも 全力出して勝ったほうが上に行く それが決定戦でしょ」
太一は毒気を抜かれてしまった。
原田の棄権は、体力温存のため。必要なのはあと一勝。次が得意な読手であれば、尚更良い選択でもある。
二戦目はクイーン挑戦者戦のみ。千早が太一に話す。
「太一も… 太一も勝ってたらここにいたんだよね それすごいよね 戦ってみたかったよね 名人はべつにどうでもよくても…」
試合開始。逢坂が勢い良く取って行く。猪熊の動き出しが遅いのが、桜沢先生は不安。その昔、猪熊は桜沢に「聞こえたら取ればいいんだよ」と言った。
桜沢さん 私ずいぶん 傲慢なこと言ってたのね
猪熊が速い取りを見せた。決まり字になる一瞬前を意識し始めた。
思ったの 負けたとき 「私 もっと強くなれる」 人は負けなければそのままよ もっと強くはなれない 負けたら変われる もっと強くなれる
クイーン位への挑戦者は二連勝で、猪熊遥六段に決定。
原田と新の対決。新は落ち着いた様子でどっしりと座っている。原田は、千早が新について言っていた「水が流れている」というのを体感していた。新の母親は新が祖父の着物を着て、祖父のような歩き方をしていることに気付いた。
千早が新に言った言葉は――
新 私たちにとっては 原田先生はどこまでいっても「先生」なんだよ 新のままじゃ勝てない
原田は目の前に、綿谷始永世名人を見たような気になった。新の佇まいに、皆も息を呑んでいる。
その頃、千早は屋外にて周防とスノー丸どらやきを食べていた。
memo
女子二試合目と、男子三試合目。恵夢たんとカメラ男子が楽しい。新がかるたから離れていた第23首にて、大会運営者に「綿谷先生にまた会える」と言われていたが、それで立ち直ったのを示しているかのよう。
読まれた描写は「あいみての」「むらさめの」「かぜをいたみ」だけ。